2018年05月20日
あいまい
夢の中で南米の旅をしていた。地元の人々と一緒に食事をするのだけどぼくは当然異邦人だから珍しそうに話しかけられる。夢の中だから会話が通じる。珍しい食材に楽しい会話と皆の情熱的な踊り。
そうこうしているうちにぼくは日本の田舎を旅している。ここでも地元の人の集まりに参加したのだけど、いかにも自分が賢いと思いこんでるおっさんが近づいてきて「あんた、いえはどこ?」と聴いてくる。
僕はこういう質問がどうも苦手である。この質問の意味するのは
1・僕の生まれ故郷はどこか?
2・僕が今生活をしている場所はどこか?
3・僕が今日寝る場所はどこか?
ところが質問する方からすれば田舎に生まれ田舎に育ち田舎で働き田舎で小利口に一つの村の中で立ち回っているだけで、彼からすれば生まれ故郷も今生活をしている場所も今日寝る場所も同じであるから、そのすべてが別々である人生という事に想像がつかない。
大分で生まれ福岡で働きクイーンズタウンに渡りその後香港で生活をして更にオークランドで20年以上を過ごして、今はこの夢の街に寝る場所があるのだから、僕は相手の質問の意味を正確に捉えられずになんと答えていいか分からず困惑するのだ。
あの、お願いだからもう少し具体的な話や質問をしてくれませんか?「あんたも分かってるでしょ」が前提で質問されても、こっちは分かってないのだ。
それからもう一つ、これは日本に行く度に感じる面倒臭さでもある。多くの日本人の初対面の際の質問は何時も犬も倒れるワンパターンなのだ。
相手の年齢、職業、住所、家族、まるで警察の尋問である。何で初対面のあなたにそんな話をしなくちゃいけないのか?プライバシーというものがない田舎で生きてる人間だから出来る質問なのだろう。
質問する方はそれが当然と思い込んでる。相手がどう感じるかではなく、自分が相手と話す時に先輩なのか敬語なのか社会的地位を確認しなければ会話が始まらないのだ。
じゃあいいよ「年齢80歳、職業無職、住所ブルーシート、家族?いない」とでも答えるか。
それとも「年齢28歳、職業社長、住所オークランド、家族?幸せ」とでも答えるか。
質問する方からすれば完全な嘘と分かる。だからその時点で会話を停止すればよいだけだ。こっちも気楽だ。
特に困るのが日本国内を移動する時である。例えば博多の屋台に行けばそこは美味しい料理が並んでおりぼくが18歳の頃から通った雰囲気がそのまま残っている。
お客は自転車でやって来たりしてビール一本とおでん食ったりして屋台のご主人と楽しく会話するのだが、ある程度こなれてくると大体「お客さん、どっから来たと?東京?」と聴いてくる。
こんな時に本当のことを話し始めたら1時間かけても終わらないし途中の追加質問に答えてたら夜が更けてしまう。
なので面倒くさいからこういう時は素直に「はい、東京の方から来ました」と言う。間違いではない。羽田空港国際線に到着して東京で仕事をしてそれから西進して福岡に入ったのだから「東京の方」であっている。
これなどは消火器を売りつけるのに「消防署の方から来ましたー」とやる詭弁であるが、別にぼくは何かを売りにこの屋台に来たわけではなく、座って黙って飲み食い出来ればそれで十分、だったら「東京の方から」で穏便に済ませる方が良い。
そして話が東京のことになれば適当に相槌も打てるし話も合わせられる。相手が良さそうな人ならちらっとリップサービスで「実は30年前に福岡に住んでたんですよー」と言うとすごく喜んでくれる。そして福岡の話に持ち込む。
しかしこちらから初対面の相手に細かいことは聴かない。相手が話したければ聴くけどこちらからいきなり聴くことではない。
でもその割に誰もが質問の內容があいまいなのだ。お互いに分かってるでしょてのを前提に自分と同じ環境で生きていると思い込んで質問するから「これで意味分かるでしょ」となる。
わからんちゅーに。
この地球は広く様々な民族や価値観や主義主張があり戸籍のない国もあるし、風呂のない家なんて普通だし掘っ立て小屋に住んでる人々もたくさんいる。
日本語は本来正確に使おうと思えば使える。ただ使っている人間が手抜きをするから意味が分からなくなるのだ。
「オフロに入った?」
「う、うん」
「何時?」
「昨日・・・」
この場合は最初から「最近何時お風呂に入った?」と聴けば良い。
質問の仕方があいまいで、それで分かるだろうと思う日本人の民族性は鎖国時代は良かったかもしれないが国際化と言うのならまずは日本語からでも明確に定義付けしていくほうが相手に伝わりやすい。
明確な日本語の使い方を勉強すれば英語も通じるようになる。日本語が曖昧なままでそれを英語にするからどんなに発音が良くても意味不明になる。こういうのはよく見かける。結局自分ってのがなくて周りが観えてないのだ。
言葉は意思を伝えるために存在する。つまり伝わってなんぼ。到達主義。そこをよく考えて、どう言えば相手に正確に伝わるかを考えるべきだ。