2018年08月23日
本は2度読む
僕は小学生の頃から文庫本を読み漁りで文字通り「ずいぶんたくさんの」本を読んだ。会社の会議室も壁一面が本で埋まっているが、これは殆どがオークランドに来てから集めたものだ。
最初の頃はホテルの近くにある大手書店に行って面白そうなのを10冊位まとめ買いしていた。しかしAmazonをチェックしてみるとまさに山程ある。そして日本のAmazonは書籍であれば殆どがニュージーランドに郵送可能である。
またNZに送れない品物の場合は一旦都内のホテルに送ってもらい部屋でスーツケースに移し替えていた。なので何時の間にか壁一面が本になったのである。
本には面白いことに一回目に読んだ本の印象と二回目に読んだ印象がずいぶん違う場合がある。僕にとって毎回違う印象と学びになったのは五味川純平の「人間の条件」である。実はこの本は日本から持ってきた数少ない本である。
古い体裁だし戦後すぐに書かれたので文字も小さい。これが6冊シリーズになってて様々な場面を観せてくれるのだけど、これが読むたびに印象が変わるのだ。
最初に読んだのが小学校の時で作品としての面白さを楽しんだのだが、1年経って読み返すと今度は本の細部に目が行くようになった。
超エリート大企業である満州鉄道で働く主人公の梶が冒頭で雪道を歩きながら恋人と話す場面、鉱山で起こった事件では何とか中国人労働者を救おうとする場面、戦場では日本陸軍の理不尽さを描く。
とくに軍隊と一緒に行動する売春宿の実態も詳しく描かれる。その部分を読めばいわゆる「慰安婦問題」なんてありえない事が分かる。
この本は年に一回くらい読んでたから毎回違う角度が観えてきて面白い。それと言うのもおそらく僕が学校や社会で1年間で学んだことで違う角度から読むことが出来るからなのだろう。おかげでこの本は僕にとって一種の試金石になった。去年と同じ角度でしか読めなければ成長していない証拠だからだ。
だから最近2年は読んでない。というのも、そろそろ学び尽くしたかなと感じるようになったからだ。勿論内容もしっかりしており、だから拾い読みするには良いが6冊通読はもういいかなって感じだ。
そんな感じで、自分が興味を持った一冊は2度読みした方がよいと思う。何が良いか分からなければ中國の古典であろう。
司馬遼太郎も良いのだけど、いきなりあれを読むと司馬遼太郎の世界に入ってしまい歴史的事実から「ずれて」しまい「司馬の世界」に入ってしまうからだ。
最初から「これは事実ではない」と割り切って考えつつ読むなら楽しいし学ぶものがあるのだがそれなしに読むとやばい作品である、それだけ魅力的な本なのだが。
いずれにしても本の2度読みは自分自身の学びの場として役に立つ。