2005年08月12日

信用を失う大量仕入?

昨日、レストラン部門のマネージャーがかなり怒りながら報告してきた。

「魚の仕入先を先月一箇所に集中させたら、そのお店から<金を早く払え、でないと明日から取引中止するぞ>って言われてさ、これって何?うちが嫌われてんの!?大体さ、今までも仕入れた分は全額期日までに払ってるし、滞納だって一度もないし、もう2年以上の取引があるとこだよ!私かなり怒ってるんだけど!てゆ〜か、こっちが仕入を増やしたんだから、有難う御座いますって、菓子折りの一つでも持ってくるのが普通じゃない?どーいう事?!」

僕がこの話を聞いて最初に思った事は「お、これはNZルールの問題にぶつかったな」って事。

仕入を増やしてお礼を言われるだろうという発想は「仕入れたお金をちゃんと払う」という事が大前提だ。あまりに大前提過ぎて、普通の日本人は認識していないけど、実は日本という社会は、「買った物のお金はちゃんと払う」という事が、社会全体の暗黙的合意として存在しているのだ。

でもNZでは、急に仕入が増えるという事は、取り込み詐欺ではないかと、まず疑う。会社を潰す前に、信用力(Credit枠)を目一杯使って大量仕入して、代金を払わずに会社を倒産させてしまうという考え方がある。

この考え方は、1990年代後半にアジア人、特に韓国や中国からのビジネスを扱うようになって顕著になった。

韓国の通貨危機前に増加した韓国からの団体ツアーでは、送客しておいて金を払わずに会社を倒産させる手法が目立ち、多くのキーウィが損失を蒙った。2000年代になると、中国の会社も同じ手法で、最初にきっちりと現金を払い、信用力をつけて後払いになると急激に取引を増やし、ある日突然事務所ごと逃げるのである。

NZの株式会社は有限責任であり、個人が債務保証をする必要がない。そして会社を計画倒産させた人間が翌日、別の株式会社を設立する事が出来るので、会社を利用した悪事が働けるのだ。

そんな事を知らない日本人は、仕入れたものはきっちりと払い、例え会社が赤字でも「自分個人の責任だから」と、自腹を切ってもしっかり払う。

よく言えば、それが日本人としてNZ社会で評価されている理由の一つだが、ビジネスの場ではそれがそのまま通用するわけではない。

魚屋も今までアジア人と取引をして痛い目に遭ったのであろう。

仕入れた金をすぐ払えという姿勢には、相手側の経理担当者が取引先をきちんと把握していないという点もあるし、もっと言えば魚屋のビジネスを拡大させるよりも、自分が責任を取らなくて良いように、自分の担当である売掛回収をしっかりしようという点もあると思う。

担当者としては正解だろう。部分の無謬だが、ビジネス全体としては誤謬である。しかしまあ、これは相手側の商売の話であり、当方の話ではない。

当方としては、こんなちっちゃい、利害に大きな影響の出ない問題を通じて、レストランマネージャーがNZ式の商売姿勢をしっかり体験、学んでもらったという点が大きな利点だ。

良い勉強になった。



tom_eastwind at 07:53│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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