2005年08月16日

「半島を出よ」 村上龍  幻燈舎

半島を出よ

 

6点評価の3 「読めるものなら読んで見ろ、分るか?」という態度を感じるが、文章力があり、発想も着眼点も面白い。でも、今の時代だから売れる本。

 

本格SFに比較すると、カエルやゴキブリに蓋然性(何故お前がそこにいるの?なんでお前じゃなくちゃいけないの)がなく、軍事小説とすると戦闘及び戦略に必然性がない。つまり国同士の戦争は、そこまで簡単じゃなく、他にも選択の余地が多すぎる中で、無理やり作者の好みで戦争に持っていってる。本来戦争は、それ以外の選択余地がない時に取る最終手段である事は軍事的常識だ。

 

文章力だけで4にも届くかと思ったが、これだけ長いと、きつい。短編にしてもらえばそれなりに面白かったかと思う。半村良の「戦国自衛隊」は短編だったもんな。

 

財政破綻して国際的孤立を深める近未来の日本の起こった奇蹟。という帯がついてた。

 

彼の作品を読むのは高校を卒業したての1978年「限りなく透明に近いブルー」以来だ。

 

それまで本という媒体は、その内容に関係なく、何かの主張があると思っていた僕に「そんなもん、ないよ。透明なんすよ、俺たち」って、軽くいなされた感じを受けた。

 

生理的に合わないものを感じた。同じ九州出身で年もあまり離れていないのに、そこには生活の実感がないからだ。彼らが麻薬をやろうとセックスに明け暮れようと、彼らが生きていくには空気や食物が必要なわけで、自然は空気を作り、人が食物を作る。その、人生の根幹の部分なしに何を語っても無意味である。そう思った。

 

彼の文章には、本当の人生や実業で生きる人が重要な地位を占めないままに、文字だけが散文詩のように羅列されていた。綺麗だし素敵だし、でも受け入られない世界だったのを覚えている。彼を評価するだけの心の余裕は、当時の僕にはなかった。

 

今回は何故か僕の最近のテーマ「平和ボケした日本に、遂に鉄槌が下る」という視点から引っかかってきた本だ。

tom_eastwind at 14:35│Comments(0)TrackBack(0) 最近読んだ本  

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