2006年03月01日
日はまた昇る
「あきれるほど長い時間がかってしまった。だがようやく、本当にようあく、1989年から90年にかけて「日はまた沈む」を書いた私が、今度は本書「日はまた昇る」を書く事が出来るようになった」
ビル・エモット作 「日はまた昇る」冒頭より
ビル・エモットはロンドンの経済雑誌エコノミストだが、日本駐在経験も長く、日本を好意的に評価してくれる英国人でもある。
その彼が、日本がバブルに浮かれている時に書いた本が「日はまた沈む」で、彼の予言どおり、日本はその後15年間、沈んだ。
2005年になり、やっと日本に明るさが見えてきた。15年の長くて暗いトンネルを潜り抜け、暗闇の向こうにやっと光が見えた状態である。
文中のデータや各種資料の評価については一概に「そうだ!」と言い難く、学者としての分析よりも資料に対する自分の判断を表明しているという感じだ。しかし、英国人という立場から今の日中、日韓、日米関係を欧州のそれと比較考量している分は、データとして学ぶものがあった。
日本の最近15年をさらっと読み流してデータ確認や大きな潮流という視点から見ると、面白いかもしれない。但し靖国問題、南京事件など個別のケースに関しては、中途半端な意見を書くのはいかがだろう?本文に大きな影響はないのだし、もうちょっとさらりと流して欲しかったな。
しかし最近は、日本の復権をテーマにした本に、よくぶつかるな。世の中の流れが「復権」に向かっている証拠だろう。
しかしそれと同時に、格差社会も広がっている。ほんとうに、国境の長いトンネルを抜けると、そこは別の国だったという事になってしまった。これこそ、日本に出張に行って一番肌で感じる部分だ。そして世の中の8割の日本人が理解していない部分だろう。
小泉政権が誕生する一年前、2000年5月のコラムで「経済開国」「平成維新」という平成維新を扱った。その時に周囲に「あと5年で維新は成立する、だからこそ今を頑張ろう」と言っていたのを思い出す。
**2000年5月のコラムより抜粋**********
平成維新はすでに始まっている。明治維新の主役は武士であり、平成維新の主役は官僚なのだ。
今日本で起こっている現象は、血の流れない革命である事を認識しているだろうか?維持しながら刷新していく作業では、人の血が流される事はないが、今まであった多くのものが抹殺されて「過去の遺物」となって博物館に飾られていく。
「昔はサラリーマン企業戦士という階級があって、日本人の80%はそう言う人だったのよ。見て、この疲れた顔でよれたネクタイして、居酒屋では上司の悪口言いながら昼間は部下いじめをしてた人たち。」そう入館客に指差される日も遠くないであろう。
明治維新では45年の間に多くの既存階級(武士・公家)が時のかなたに流されていった。平成維新では昭和にすがり付いて終身雇用と年功序列を信じていた企業戦士階級(サラリーマン)が流されていくのである。
そんな時に君はマニュアルなしで生きていける自分を、この国で見つける事が出来るだろうか?それは君次第だ。
***************