2010年06月08日
中庸 真ん中に立つ大事さ
シドニーのある日本食レストランでのこと。
その店はシドニーでもかなり有名であり昼食時になると地元オージーのビジネスパーソンで満席になるほどの人気店である。
シドニー初日は夕食食べずに寝てしまい、翌朝も朝食摂らなかったので結構空腹。ホテルから歩いて10分程度の場所なので散歩を兼ねてそのレストランを一人で訪れる。
12時丁度に開店してその時間ぴったりに行ったのだけど、最初に出てきたウエイターさん、
僕:「すみません、予約してなくて一人なんですが今から入れますか?」
彼:予約台帳を見ながら「ご予約はされてますか?」だって。
午後からの会議がありここであまり体力を使いたくなかったので暫く黙っていると、フロアマネージャーらしき女性が飛び出てきて、「いらっしゃいませ、お一人様ですね、少々お待ち下さい」ときりっとした対応。
海外の日本人社会の現場においては女性の方が圧倒的に男性より優れていると言う統計を取った事はないが、肌感覚では女性の方が確実に優秀である。
13:00までに食事が終わるのなら一席ご用意出来ますとの事で、勿論OK。
しかしここで次の問題発生。店内中央にあるバーカウンターを背中にして数名の日本人フロアスタッフがいるのだけど、開店早々私語ですかい。
楽しそうにスタッフ同士でべちゃくちゃやってるんだけど、話の内容がどうでもいいような昨日のフラットで起こった事や友達情報の交換。これをいきいきとした顔で堂々とやってて、更にバーカウンターの中にいる男性もそれを止めようとしないばかりか、自分から話題にはいっていってる。
おしゃべりをする顔を見ながら、何故彼らはこんな誇らしげにしているのだろうと疑問に思った。そこで「あ、そうか!」と気付いた。
彼らはオージーのレストランのフロアスタッフの真似をしているのだ。
シドニーに限らずだがこっちのレストランのフロアスタッフは仕事中でもよくおしゃべりをする。別に客の注文を無視しているわけではなく、ちゃんと目はお客を見ながらも隣のスタッフと楽しそうにどうでも良い事をおしゃべりしているのだ。これはもう彼らの文化であり、こちらがどうこう言う事もない。きちんと仕事をしてくれてこっちに迷惑がかからないなら、楽しそうに働くのもそれなりに「あり」だと思う。
しかし一応シドニーでも有名な日本食レストランでこの程度の教育かい?と思ったんだけど、そうじゃないんだ、彼らは単純にオージースタッフと同じようにしたいのだ。
どういう事かって言うと、海外で長く生活をしたことがない人には少し意味不明かもしれないが、シドニーと言う街はオークランドと違い非常に生存競争が厳しい。ビザも取りにくい。ましてや英語を使う職場では生半可な事では接客も出来ない。勿論サービスもプロ並みを要求される。
そんな厳しい環境で何とか仕事を見つけて白人を相手に仕事出来て、もうそれだけで嬉しくて仕方ないのが彼らの気持ちなんだろうと推測した。
そんな彼らが職場でおしゃべりをするのは、そうすることで「おれたちシドニーでもやれるもんね、オージーみたいにおしゃべり楽しむもんね」と自分の社会的地位を再確認しているのだろう。
その姿が同じ日本人が見ててどう思うかよりも、おれたち日本人なんてあまり相手にしてないもんね、オージービジネスパーソンばっかりで満席になる店なんだから、日本人客だからと言って気を使う必要もないものねという空気をびんびん感じるのはこっちが気にし過ぎか。
席に付いてすぐにうどん定食(36ドル)を注文して、喉が渇いてたので「ミネラルウォーターを下さい」と言うと、「はい!」って言ったウエイトレスさん、グラスに入ってレモンを浮かべているガスウォーター、つまりスパークリングを持ってきたのにはびっくり。
オークランドの店だってミネラルウォーターを頼めばキーウィスタッフに「Stillか、Sparklingか」と必ず聞かれるよ。
なのにこの店では何も聞かずにレモンを浮かべたスパークリング。多分言いたいことは「あらま?このお店は高級日本食レストランで、わたしたちはプロのウエイトレスで、あなたが何も言わずにミネラルと言えばガスにレモンが当然でしょ、他のオージーのお客様は皆さんそうされてますよ」だろうと、これも推測。
要するに「あたしはこの街で生活しているのよ、まるで観光客みたいなお一人様がしけたうどん定食頼むのに一々Stillですか?なんて聞いてられルカよ、」なのだろうと、これも推測。もしかしたらStillという単語を知らないのかもしれない。
こういう人間に限って下手な英語で“Opps!(日本語で”おっと“の意味)”なんて言うんだろうね。
ガスでもキライではないし午後一番で会議もあるし、まあいいやこれでも飲んでおこう。
とか思って料理が来るのを待ってたら、同じスタッフが「Here you are」と料理を運んできた。おいおい、さっきは日本語だったよね。これまた推測だけど僕に何か言われたら「あら、ついつい英語が出ちゃった、すっみませ〜ん」くらいに、にこっと笑うのだろうね、いかにも優越感に浸りながら。
まあいいんだけどね、この店は僕の店でもないし、料理はちゃんと美味しいし、うどんのだしも一ひねりしているし、付けあわせで出た照り焼きチキンも実に柔らかくて美味しいし、最初のフロアマネージャーの対応もしっかりしているし。
その後ほんとうにぞくぞくと地元オージー客が入店してきて、周りを見渡しても日本人客はその時点で僕一人であった。嬉しそうに笑顔でお客をテーブルに案内するスタッフの皆さん、楽しそうですな。
30分で食事を終わらせて、フロアスタッフに声をかけて「ここはテーブルチェックですか?」と聞くと一瞬きょとんとした顔で「どっちでもいいです」との事。テーブルチェックの意味が分からなかったのかな、それともオレの性格が悪くなったのかな。
伝票を待っている間にオージーが注文したワインが続々と出ている。昼間っからよく飲むな、それにしてもバースタッフの男性のワインに関するしょうもないうんちくを昼時の忙しい時間にワーホリらしきウエイトレスに教えるのもどうかな、下らないおしゃべりが止まらないな、などと眺めていた。
5分ほど待って届けられた41ドルの伝票にチップを4ドル乗せて45ドルを支払ってお店を出ようとすると、最初に対応してくれたフロアマネージャーが気付いて「有難う御座いました!」と声を掛けてくれた。
日本人は白人社会に入って生活をすると、ほぼ確実に二つに分かれる。地元社会の猿マネをして自分が偉くなったと錯覚して同じ日本人をバカにする人々と、その正反対に何があっても「だからこいつら駄目なんだよ、やっぱり日本が一番だよ」とひたすら日本信仰を持つ人々。
その真ん中で現地の良いものは素直に取り入れて、けど日本人の良さを失わずに生きるってのは、かなり意識的に自分を毎日磨いておかないと出来る事ではない。何も意識していないと、いつの間にかどちらかに流されてしまい、結局相手の良さも理解出来ず自分のバカさ加減にも気付かなくなっていく。
彼らを見てぼくも反省反省、自己反省である。
写真はマーティンプレイスのランチタイム。ビジネスマンがビジネススーツを着て地べたに座り込んでいろんなもんを食ってました。日光浴を楽しむのは良いけれど、このあたり鳩も目立つのでご注意ですな。
その店はシドニーでもかなり有名であり昼食時になると地元オージーのビジネスパーソンで満席になるほどの人気店である。
シドニー初日は夕食食べずに寝てしまい、翌朝も朝食摂らなかったので結構空腹。ホテルから歩いて10分程度の場所なので散歩を兼ねてそのレストランを一人で訪れる。
12時丁度に開店してその時間ぴったりに行ったのだけど、最初に出てきたウエイターさん、
僕:「すみません、予約してなくて一人なんですが今から入れますか?」
彼:予約台帳を見ながら「ご予約はされてますか?」だって。
午後からの会議がありここであまり体力を使いたくなかったので暫く黙っていると、フロアマネージャーらしき女性が飛び出てきて、「いらっしゃいませ、お一人様ですね、少々お待ち下さい」ときりっとした対応。
海外の日本人社会の現場においては女性の方が圧倒的に男性より優れていると言う統計を取った事はないが、肌感覚では女性の方が確実に優秀である。
13:00までに食事が終わるのなら一席ご用意出来ますとの事で、勿論OK。
しかしここで次の問題発生。店内中央にあるバーカウンターを背中にして数名の日本人フロアスタッフがいるのだけど、開店早々私語ですかい。
楽しそうにスタッフ同士でべちゃくちゃやってるんだけど、話の内容がどうでもいいような昨日のフラットで起こった事や友達情報の交換。これをいきいきとした顔で堂々とやってて、更にバーカウンターの中にいる男性もそれを止めようとしないばかりか、自分から話題にはいっていってる。
おしゃべりをする顔を見ながら、何故彼らはこんな誇らしげにしているのだろうと疑問に思った。そこで「あ、そうか!」と気付いた。
彼らはオージーのレストランのフロアスタッフの真似をしているのだ。
シドニーに限らずだがこっちのレストランのフロアスタッフは仕事中でもよくおしゃべりをする。別に客の注文を無視しているわけではなく、ちゃんと目はお客を見ながらも隣のスタッフと楽しそうにどうでも良い事をおしゃべりしているのだ。これはもう彼らの文化であり、こちらがどうこう言う事もない。きちんと仕事をしてくれてこっちに迷惑がかからないなら、楽しそうに働くのもそれなりに「あり」だと思う。
しかし一応シドニーでも有名な日本食レストランでこの程度の教育かい?と思ったんだけど、そうじゃないんだ、彼らは単純にオージースタッフと同じようにしたいのだ。
どういう事かって言うと、海外で長く生活をしたことがない人には少し意味不明かもしれないが、シドニーと言う街はオークランドと違い非常に生存競争が厳しい。ビザも取りにくい。ましてや英語を使う職場では生半可な事では接客も出来ない。勿論サービスもプロ並みを要求される。
そんな厳しい環境で何とか仕事を見つけて白人を相手に仕事出来て、もうそれだけで嬉しくて仕方ないのが彼らの気持ちなんだろうと推測した。
そんな彼らが職場でおしゃべりをするのは、そうすることで「おれたちシドニーでもやれるもんね、オージーみたいにおしゃべり楽しむもんね」と自分の社会的地位を再確認しているのだろう。
その姿が同じ日本人が見ててどう思うかよりも、おれたち日本人なんてあまり相手にしてないもんね、オージービジネスパーソンばっかりで満席になる店なんだから、日本人客だからと言って気を使う必要もないものねという空気をびんびん感じるのはこっちが気にし過ぎか。
席に付いてすぐにうどん定食(36ドル)を注文して、喉が渇いてたので「ミネラルウォーターを下さい」と言うと、「はい!」って言ったウエイトレスさん、グラスに入ってレモンを浮かべているガスウォーター、つまりスパークリングを持ってきたのにはびっくり。
オークランドの店だってミネラルウォーターを頼めばキーウィスタッフに「Stillか、Sparklingか」と必ず聞かれるよ。
なのにこの店では何も聞かずにレモンを浮かべたスパークリング。多分言いたいことは「あらま?このお店は高級日本食レストランで、わたしたちはプロのウエイトレスで、あなたが何も言わずにミネラルと言えばガスにレモンが当然でしょ、他のオージーのお客様は皆さんそうされてますよ」だろうと、これも推測。
要するに「あたしはこの街で生活しているのよ、まるで観光客みたいなお一人様がしけたうどん定食頼むのに一々Stillですか?なんて聞いてられルカよ、」なのだろうと、これも推測。もしかしたらStillという単語を知らないのかもしれない。
こういう人間に限って下手な英語で“Opps!(日本語で”おっと“の意味)”なんて言うんだろうね。
ガスでもキライではないし午後一番で会議もあるし、まあいいやこれでも飲んでおこう。
とか思って料理が来るのを待ってたら、同じスタッフが「Here you are」と料理を運んできた。おいおい、さっきは日本語だったよね。これまた推測だけど僕に何か言われたら「あら、ついつい英語が出ちゃった、すっみませ〜ん」くらいに、にこっと笑うのだろうね、いかにも優越感に浸りながら。
まあいいんだけどね、この店は僕の店でもないし、料理はちゃんと美味しいし、うどんのだしも一ひねりしているし、付けあわせで出た照り焼きチキンも実に柔らかくて美味しいし、最初のフロアマネージャーの対応もしっかりしているし。
その後ほんとうにぞくぞくと地元オージー客が入店してきて、周りを見渡しても日本人客はその時点で僕一人であった。嬉しそうに笑顔でお客をテーブルに案内するスタッフの皆さん、楽しそうですな。
30分で食事を終わらせて、フロアスタッフに声をかけて「ここはテーブルチェックですか?」と聞くと一瞬きょとんとした顔で「どっちでもいいです」との事。テーブルチェックの意味が分からなかったのかな、それともオレの性格が悪くなったのかな。
伝票を待っている間にオージーが注文したワインが続々と出ている。昼間っからよく飲むな、それにしてもバースタッフの男性のワインに関するしょうもないうんちくを昼時の忙しい時間にワーホリらしきウエイトレスに教えるのもどうかな、下らないおしゃべりが止まらないな、などと眺めていた。
5分ほど待って届けられた41ドルの伝票にチップを4ドル乗せて45ドルを支払ってお店を出ようとすると、最初に対応してくれたフロアマネージャーが気付いて「有難う御座いました!」と声を掛けてくれた。
日本人は白人社会に入って生活をすると、ほぼ確実に二つに分かれる。地元社会の猿マネをして自分が偉くなったと錯覚して同じ日本人をバカにする人々と、その正反対に何があっても「だからこいつら駄目なんだよ、やっぱり日本が一番だよ」とひたすら日本信仰を持つ人々。
その真ん中で現地の良いものは素直に取り入れて、けど日本人の良さを失わずに生きるってのは、かなり意識的に自分を毎日磨いておかないと出来る事ではない。何も意識していないと、いつの間にかどちらかに流されてしまい、結局相手の良さも理解出来ず自分のバカさ加減にも気付かなくなっていく。
彼らを見てぼくも反省反省、自己反省である。
写真はマーティンプレイスのランチタイム。ビジネスマンがビジネススーツを着て地べたに座り込んでいろんなもんを食ってました。日光浴を楽しむのは良いけれど、このあたり鳩も目立つのでご注意ですな。