2011年03月27日
原子力の技術は全然確立していなかった
経済合理性があるかないかってのは足し算引き算であるが、決定する際には最終的にはその地域の価値観の問題である。もしかしてある国では太陽は神様と扱われており、太陽エネルギーが採取出来ることが分かっていても神のものを奪うことなど出来ない、なんて議論が成立して原子力を採用するかもしれないからだ。
原子力の受け入れをするかってのはいずれにしてもその地域漁民が魚が食えなくなっても補償金で食えるから良いとか農民が野菜売れなくても補償金で食えるから良いとか、そうやって自分たちで決定することである。ただ原発が事故を起こした場合、その恩恵を蒙らない地域にまで放射線が飛び散るってことは今回明確になった。
つまり今までは東電と地元漁民と役所が利害関係者だったのがここに来て東電から電気をもらってないし補償費をもらってない地域の人々が補償費を貰っている地域の人々と同じ危険に曝されている事が発覚したのだ。
なので知っている人も多いだろうが現在東電及び政府発表の殆どの「安全性」が嘘であるという、危険性の部分だけを取り出してみる。
これは放射能が東日本を飛散しているが目に見えないし今すぐ何かが起こるわけではないので「そんな事ないじゃん」とか「煽るなよ」と言う人向けに知っておいてほしい情報だ。
三号炉で使っている燃料がMOXと言うプルトニウムを含んだ物質であり、これはウランよりも強力であり、もっと分かりやすく言えば原爆の原料であるのはよく知られた事実である。
プルトニウムの場合は金属もコンクリートも貫通して、屋内に退避している人も屋外に退避している人も同様に被曝する。だから屋内退避に意味はない。その意味で30km圏内の自主退避を求めるって話になったのは当然だろう。
ここから先は原発反対派の講演会で発表された、元GE技術者菊地洋一さんの2003年の公演である。合理性とは別に原発現場の危険性と言う視点から考えてみてほしい。本文が非常に長いのでかなり編集、抜粋する。ご興味のある方は下記が全文掲載。
http://www.stop-hamaoka.com/kikuchi/kikuchi2.html
原子力の技術は全然確立していなかった
私が原子力の世界に足を踏み入れたのは平和利用という言葉にだまされて、ちょうど第1次オイルショックの頃ですね。どういう縁か広島出身の先輩で僕に仕事をたたき込んでくれた6歳ほど先輩がいるのですけれども、その人が10年ぶりに尋ねてきて、 原子力の平和利用にどうしても力を貸してくれということで、無理やりGEに引っ張って入社させられたんですね。
ですから、エネルギーもない国なんだから、とにかく中東のその湾岸諸国の横暴に日本が振り回されてはいかんということで、原子力でやっていかなければいかんということで、あまり原子力のことを深く考えないで、その先輩の言葉を信じて入社したわけです。
実際に働いてみますと、原子力の技術というのは全然確立していなかった。とにかくハチャメチャなんですね、原発を造っていく工事の段階で。工事のミスが出るということは人間のやっていることですから、よく起こることですけれども、問題なのは設計そのものも十分検討されていない、いいかげんな感じで工事が進められていました。
ですから建設中にしょっちゅう変更がある、そのことにもびっくりしましたけれども、送られてくる図面があちこちぶつかっていたり、そういうことにもびっくりしました。自分でチェックしてみて余りにもぶつかっているので、びっくりしましたけれども、とにかく確立された技術じゃないということです。
それは何故かというと溶接技術だとか、金属のことを扱う学問として冶金工学といういい方をしていますけれども、そういう冶金工学上の現代技術の限界というものもあるんですね。そういうものを隠したまま、もう技術は大丈夫だというような事をいいながら原発を造っております。
それはいくら安全だといっても、運転してみればわかることで、絶対こんなことがあっちゃいかんというような、炉の中の大事な部分を支えている大きな部品が 360°、1周にわたってヒビ割れだらけになって、それを何とか補修したら、今度は下の方にまた 360°ヒビ割れして、それをまた補修して。そんなことではどうしようもないということで、その部品を大がかりに交換したりもしております。
東京電力に交渉したりいろいろしましたけれども、とにかく起きないといいはるわけです。でも実際、電力会社は自分の原発のことを知りません。僕がいろいろ説明をしますと、「へえっ! そんなことあったんですか」 といってびっくりするわけですけれど、調べてみると僕が言った通りになっている。とにかく電力会社は現実を知りません。
それはそうですよ。原発の工事現場では、電力会社が一番上にいて管理しているわけですけれども、実際に工事するのは東芝や日立や日立プラントや、IHI(石川島播磨重工業)や三菱や三菱重工、そういった原発メーカーの人達が管理してやっておりますし、いろんな不具合が出てきたときには、自分たちに不利な 事は当然お客さんの電力会社には隠しておくようにします。
今回(柏崎)現場に行って(原子炉の)屋根を見ますと、そういう大きな山形じゃなくて、何かお風呂のすのこ板みたいな形をした鉄板が、鉄板といってもブリキみたいなものですけれど、それが張ってあるんですね。その上にやっぱり薄いコンクリートが打ってあって、強度はまったく無いです。おもちゃのロケット弾みたいなものぶちこんでも穴は開けられます。
でも、穴が開いただけじゃ原発の大事故にはならんだろうと、こうみな思うかもしれないんですけれど、上から何かものを落として燃料プールというのの中で爆発されたら、もう大変なんです。燃料プールというやつは、蓋がしてないんですね。最上階の床に大きなプールがありまして、そこに使用済燃料というものがぎっしりつまっていて。それはプルトニウムという毒物をいっぱい含んでおりますので、そこが 爆発して大気中にそういうものが飛び散ったら、どれだけ大きな災害になるかと、予想もつかないくらい大きい災害になるのですね。そういうことが簡単に起こるのです。
ですから原発は事故もそうですし、テロに対してもそうですし、危険性という点からいけば、まったく割に合わない発電方法です。先程もちょっといいましたけれど、お湯を沸かすだけなのですよ。原子力発電所といったらですね、原子力で特殊な方法で電気を作っていると思ったら大間違いなんです。お湯を沸かして、その蒸気でタービンを回している点では火力発電と何にも変わらない。ですから「原子力やかん」といった方がいいのです。
出来た後になったら、これずーっと事故の心配せないかんですよ。いつ事故が起きるかわからんですから。
発電が終わった後、どうするかという問題も残ります。まず、撤去することは不可能です。国は更地にして次の原発をまた造るような計画で、30 年前ぐらいは一生懸命いっていましたけれど、一つ壊してみればわかります。商業用の大きなプラントを壊すということは、経済的に不可能です。物凄くお金が掛かりますから。今新しいもの造るより、古いもの壊す方が高い時代です。まして放射性廃棄物ですから、安全にそれを処分しようと思ったら、とんでもないお金が掛かります。その間にも公害がでます。
原発を肯定する人は被曝労働の実態を知りません。電力会社が見せる管理手帳だとか、放管といいますが放射線管理がいかに徹底していて安全かということしかいいません。だけど僕の知り合いでも、身内が被曝して死んだということを告白した推進派の建設会社の社長もいます。
推進する側の人は本当の原発の実態を知らなさすぎます。僕は原子炉の中の、配管と原子炉のつけ根、ノズル部分が折れそうになるようなヒビ割れが 360°入って、その補修工事をしました。まず炉内の洗浄をするわけなんですが、もちろん、そこに人間がいたら大変な被曝をするから、ちょっと離れたところから、長いノズルという棒の先から水がものすごい勢いで吹き出すようにしてやる。でも人間が放射能まみれの炉の中に入っていくことは確かです。
ですから燃料交換する炉の中に、鉄のゴンドラに人間を乗せて、それをクレーンで天井から吊って炉の中に下ろしてやります。そうして炉を洗いますが、水の反動でゴンドラが揺れるわけです。そうすると原子炉は直径6mもありませんから、半径3mもないわけです。非常に怖いんですね。だからどうやるかというと、上の方で人間が4人で四方からゴンドラを引っ張ってやるのです、フラフラしないように。そうやって原子炉についている放射能だらけの水垢を削り落とすような勢いで洗って下りていくのですけでど、そんな仕事やってみた人いますか、怖いですよ。
とにかく原発があったら被曝作業は避けられないのです。電力会社なんかは常に安全だと、管理しているから安全だということをいいまくります。だけどそれは僕のように原発の中で働いてきた人間、まして原子炉の中でも働いたことのある人間として、そんなきれいごとでは絶対に済まないということがはっきりいえます。
僕も白血球が急に倍くらいに増えて、子供がいるから非常に不安だったことがあります。まあ幸い10 日くらいで白血球が元に戻ってくれたので、また現場に入って仕事を続けましたけれども。それは僕は統括安全管理者として作業員の被曝線量を管理したり、安全性をちゃんと保つための責任者でしたから、入らないわけにはいかないから続けたんですけど、本当に苦しいもんですよ。家族がいたりして、そういう仕事せにゃいかんというのは。それやらなかったら他の人達が被曝がどんどん増えるわけですから。マイナス面さえ隠しておいたら、原発って非常にいいように思えるんですよ。
●電力会社にも国にも隠される極秘情報
本当に原発ぐらいウソだらけのことはないのです。GEの僕はトップシークレット(極秘) を見れる立場でやっていましたから、赤いトップシークレットの判を押したそういうテレックスをよく見ましたけれど、電力会社にも国にも隠しているトップシークレットってあるんです。そういうものはみんな隠されたまま安全だと宣伝されているんです。
だからアメリカのGEの、一番原子炉に詳しい開発者達が、僕が辞める1年くらい前に3人揃って辞めました。定年退職前の高級技術者たちです。もう博士号持って、日本のGEの原子力の開発をずっと担ってきた有力なメンバーです。そういう3人がですね、必ず事故ると、
話はそれましたけど、原発のそういう所で仕事やる時はですね、3点セットというのがあって、フィルムバッチとアラームメーターとポケット線量計。この3つを付けるという話がある。その3点セットをはずして記録が残らないように、それ付けているともう仕事にならないですよ。そういう話は現場でよーく聞きました。何度も。ですから浜岡で嶋橋青年が死んで、中部電力がこんな低い被曝線量で死ぬわけがないと。でもその急性白血病とかは原発特有のものですから労災では認めるわけですよ。だけど電力会社は記録みたらそんなに被曝していないと、ちゃんと管理していてこうだという。だけどそういう3点セットを全部はずして仕事しているということはしょっちゅう耳にしていますから。そういうことで死んでいく人もいると思います。
今の話に関して特別僕が言いたいことはですね。僕等は事故といいますけども、推進側は決して使いません。よっぽどのことがなければ、死人でも出たら別でしょう。何人か。なかったら事故といいません。みんな事象という言葉を使います。それは事故ではありません、事象ですと。そういう事象が起きただけですと。だけど福島2−3のポンプ事故の前、試運転でも起きていたのです。試運転で機能試験やったらポンプの羽根がぶっとんで、モーターも燃えて、これが世界で一番巨大な原発。