2011年04月08日
香港の和食屋にて
【香港=槙野健、シンガポール=岡崎哲】福島第一原発事故で日本在住外国人の国外退避が相次ぐ中、香港が「有能な人材を呼び込もう」とビザ審査手続きを大幅緩和した。
これに対し、シンガポールなど周辺国は「流出は一時的現象」と冷静。香港は国際金融センターを支える人材の流出に悩んでおり、震災がその危機感をあぶり出した形だ。
香港政府による特別措置は3月17日から開始。通常4〜6週間かかるビザ審査期間を2日間に短縮し、3月末までに日本滞在者270人にビザを発給した。うち158人が就労ビザで、その約8割が月収10万香港ドル(約110万円)以上の投資会社幹部や証券アナリストなどの専門職という。
入管当局幹部は2日の記者会見で「ビザ発給を迅速に行わなければ、他国に人材が流出する」と発言。国際金融センターとして競合関係にあるシンガポールへのライバル意識をむき出しにした。
一方、シンガポール政府は、東京からの人材流出は一時的なものとみており、香港の対応は「過剰」と映っている。
(2011年4月7日21時59分 読売新聞)
今日の香港は晴れで25度くらいか。せっかく香港にいるのでチムシャツイの吉野家で牛丼を食べる。ぼくが香港で初めて吉野家の牛丼を食べたのは90年代半ばのアドミラルティ(金鐘)だった。
当時のオフィスからも歩いて10分程度なので頻繁に利用していたが、当時は香港人に対してどのように料理を提供すれば良いか分からず手さぐりしながらのオペレーションだった。
朝ごはんとして吉野家に来てもらう為に牛丼のごはんの代わりに即席めんを使ったりした。地元の日本人からすれば「吉野家ともあるものが何をするか!」だった。最初は生卵を出す時期(冬場)もあったがそのうち通年で生卵はやめになった。
地元の生卵の鮮度管理を考えればそうなるのだろう、「ぼくは死んでもいいから生卵を売ってくれ」と言っても「NO」と言われたのを覚えている。サルモネラたっぷりの生卵でも消化する自信はあったのだけどな(笑)。
そうして今、吉野家は香港のあちこちで「大家楽」や「家郷鶏」と同じ地元民の定食になっている。
狂牛病騒ぎで日本で吉野家で牛丼を食べられなかった時期、香港の吉野家で牛丼を食べるのがとっても楽しかったのを覚えている。
投宿先のシェラトンホテルにある日本食料理店「雲海」にお客と同行した。ここは寿司カウンター、鉄板焼き、テーブル席と3つの島に分かれている。鉄板焼きカウンターは地元香港人家族で大賑わい、テーブル席もカップルなどでほぼ満席であった。
ところが寿司カウンターの客はたった一人だけ。職人二人がヒマそうにしている。テーブル席について「ひらめの焼き物」を注文すると、最初は「はい!」って返事だったのが3分もせずに戻ってきて「すみません、ひらめは売り切れです」
ふ〜ん、じゃあタイは?イカは?何の焼き物ならあるの?答えは「タイの兜焼しかない」。
事ここに至って気づく。この店でも先週のシンガポールの日本食店と同じで、魚は築地から仕入れているのだ。そしてうちの店でも使っているからわかるが「タイの兜焼き」は冷凍ものが手に入るから、これが本日唯一提供出来る魚料理となる。
じゃあ寿司ネタは?と言うと、じつはかなりのものが中国産のカトキチ冷凍物が手に入るので何とかカウンターに並べる事が出来る。しかし普通に使う魚は築地ルートに固定されており、急に仕入れ先を変更するのが難しいのだろう。
そう思ってふと鉄板焼きカウンターを見ると、そこで焼かれているのは豪州産和牛、豪州産ロブスター、なるほどな〜。
これだけ日本贔屓の香港でもやはり日本の魚は避けられている。今日のニュースでは千葉産の魚が仲買業者に敬遠されて漁協が「うちの魚は安全だ!しっかりと説明してほしい!」と言ってた。
けれど安全と安心は違うのだ。あなた方が昔吉野家に対して異常なまでの反応を起こして吉野家を拒否した事実は変わらない。あなた方自身が「他人事」である吉野家のビジネスに対しては「会社が潰れても自己責任でしょ」と突き放した態度を取った。
それが今、北日本の漁協に対して世界が反応しているのだ。シンガポールのレストランも香港のレストランも、なんであえてやばい橋を渡って北日本産の魚を買うか?
日本人は「他人事」の時は実にエラそうに理屈ばかり並べてどうのこうのと言う。ところがそれがいざ「自分の事」になると過剰反応を起こして安全でもない魚でも「食ってくれ」と言うのだ。
安全でないという書き方が風評と批判されるかもしれないが、ぼくからしたら安全と説明する科学的根拠である数字をしょっちゅういじって嘘ばかりつく政府のいう事など一切信用出来ない。それは水俣病の時でも十分に示された。
魚が安全か?ふつうに健全な疑問と高校生程度の知識があれば安全と言えないことなど誰でも分かる。
政府としては「風評被害を取り締まる」とか言ってるが、風評ではない場合はどうするのだ。
この際ぼくは政府の人々に提案したい。それは東京の官公庁で働くすべての人々が政府の予算で魚を全量買い上げして、官公庁の職員及びその家族、生まれたばかりの子供を含めて毎日三食北日本産の魚を食べて10年にわたって安全性を証明してもらいたいって事だ。