2011年04月17日
メディアリテラシー
アゴラで公認会計士・税理士が東電株主責任について書いている。
http://agora-web.jp/archives/1308566.html
これは今政府内で出てきている東電国営化論に関してだ。東電の株を100%減資して国有化してしまえという意見に対して「民間企業を国家がいきなり乗っ取る方法はルール違反ではないか」と訴えている。
内容を読むと至極まともな事である。
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株主は日本の法律で決められたルールで株を購入してその株の価値が下がれば損をする。
損をして最終的に会社が倒産すればその時は一切残余財産を受け取ることは出来ない、そういうリスクを理解して購入している(はずだ)。
取締役が原発の危険性を知っていながら対応しなかったという事で株主訴訟になる可能性はあるし更にその原発を認可した保安院も訴訟の対象となるであろう。
しかし株式会社の株主有限責任制度では出資した資金以上の責任はなくその意味で100%減資による国営化は今だいくらかでも価値のある資産を政府が強制的に没収することであり、それはダメでしょ。
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大体こんな趣旨であるが、それに対してコメントでは「株主救済するのはおかしい」とか「本来負担すべき株主の損失を子供達に付け回すような誠に以て言語道断、卑劣な行為です。」とか、かなり感情的な書き込みがされている。
最初にコメントを読んだ時は夜だったので、あれ?どうも話が噛んでないぞ、ずれてるぞと思ってもう一回読み直した。んん、やっぱり分からん。作者の文意とコメントの文意が完全にずれている。
それともぼくが何か見逃している事実があるのか?彼らはお互いに暗黙知の部分があり、それを文字化してないだけか?なんて思いながらもう一回読み直す。
やっぱりどうもおかしい。株主は出資金全額を失う事は理解している(はずな)のだ。出資金を救済をするなど作者は一言も書いていない。
負担すべき株主は損失を負担しているのだ。東京電力の株を購入した人は今頃大変であろうが、少なくとも彼らは購入価格で買い戻しをしろなど一言も言ってない。
東電の株価は3か月前に比較して既に74%も下がっている。2千円で買った株が5百円程度に下がっているのだ。それ以上何を負担しろと言うのか?
本来ここで語られるべきは「100%減資」と言う処理が東電に適用されるべきかどうかであるのだが、そういう法的な議論を専門家がやり取りするレベルではなく、東電の株主がまるで禿鷹か悪人のような書き込みである。
要するに最初は書き手が書いてない事をまるで書いてあるかのように批判して次にその批判を正しいものとしてもっと酷い批判をして、それを読んで原文を読まないままの連中が更に次の批判を書き込んだりして炎上するパターンである。
アゴラは本来かなり高いレベルの議論がされる場であるが、それでもこのような書き手の趣旨を理解出来ずに自分の感情で書き込むコメントが多いのには呆れる。要するに人の書いた文章を読めてないのだ。
以前もあるブロガーが「竹槍でB29は落とせない」と書いたら「そんなの当り前だ、お前はバカか」みたいな書き込みがあった。
「B29を竹槍で」ってのは物理的に不可能なものを精神論でどうにか出来る、どうにかしようと本気で思ってる連中に対する皮肉であり、言葉そのものをまともに捉えられてしまえば議論など出来なくなる。
それこそかわいい孫を見て「目の中に入れても痛くない」って言ったら「じゃあ入れてみろ、とっても痛いから」って言うようなものだ。
このような書き込みを読んだ普通の人々は「何だ?ネットの世界っておかしいぞ、こんなのよりも新聞やテレビの方が信頼出来るぞ」って思うかもしれない。
リテラシーの本来の意味は識字率でありLiteracy rate となるが、それが最近では文字や言葉を操る事が出来る=教養があるという解釈が一般的である。メディアリテラシーはコンピューターやインターネットや映画や本から発生するイデオロギーをそのまま鵜呑みにするのではなく主体的に判断する能力を言う。
このような書き込みは、もしかしてネットを常に「危険であり異常な人々の住む世界」と規定して出来るだけ一般国民をネットから離しておきたい政府の依頼を受けた電通あたりがやってる作業なのではないかと、結構本気で思ったりする。
もしこれが政府の教育宣伝活動ではなくて本当に日本人のメディアリテラシーが下がっているのだとすれば、その方が怖い。