2011年04月23日

目くそ、はなくそを褒める


これは原発とは全然関係ない話であるが、先週当社を訪問頂いたお客様、モノづくりの日本で非常に付加価値の高い商品を作り出して成功された方である。同時に非常に短気でもある(笑)。

 

彼が先週非常に怒った声で「おい!この街の日本人ってのはどうなってんだ!」と言い出した。聞いてみるとなるほど納得、しかし怒ってもどうしようもないでしょって内容だった。

 

1990年代にニュージーランドに移住してきた人は日本でのビジネス経験のない人が多く、日本人と言う立場を利用して見よう見まねで何かのビジネスをやるのだが、彼らはビジネスに哲学が必要だという事を理解していない、つまり彼らはあまりビジネス哲学を学んでいない。

 

海外に出て日本食レストランをやったりビジネスをやったりするのだが成功すればするほど「俺はすごいだろ!」と威張りたくなる。周囲の連中も「しゃっちょ!すごいっすね!海外で単独起業なんてかっこいいっすね!」とほめそやす。

 

結果として日本のビジネスからしたら「めくそ」にしかならないビジネスモデルとサイズをひけからして自分を褒めて認めてもらいたいものだからすぐに「xx会」などを作ってつるんで喜んでる。

 

「自分を褒めてもらいたい」とか「認めてもらいたい」なんてのは日本だと中学生が悩む「僕は何故生まれたんだろう?」とか「社会に僕の居場所がない」程度の問題である、

 

本来はビジネス社会生活を通じて「企業は社会貢献するものであり貢献の方向性でのみビジネスモデルを構築すべきだ」という哲学を学んでいるものだ。

 

ところがそういう部分の哲学が抜けたまま外国に出て西洋式のビジネスの外側だけを見てビジネスとは単純に金儲けをする手段であるとしか考えられない。

 

西洋式ビジネスの場合はビジネスを通じて得た利益を社会に還元するという習慣が根付いている、例えばビルゲーツのような財団を作ったりするのだが、寄付と言う部分だけこの「しゃっちょさん」の頭の中では欠落して日本式になっていて社会に貢献するという発想が出てこない。つまり日本と西洋の自分に都合の良いところだけを取り上げているのだ。

 

そして親睦団体などとかで「日本と当国の〜」なんてそれらしい事をやっているのだが、その内容の殆どはめくそがはなくそに向かって「はなくそさん、あなたの形は何てきれいなんでしょ、うらやましいわ」とやり、褒められたはなくそが「そんな事ないですよはなくそさん、あなたのめくそはとても輝いていますよ」とお互いに褒め合い、相手の汚い面は黙っているだけの仲良し会に過ぎない。

 

このような仲良し会は海外進出企業が現地でxx会を作り更に駐在員の多い日本人社会ではオクサマまでがxx会などを作り旦那の地位に応じてオクサマ会での位置が決まったりして、彼らの中で疑似企業化するのもよく似た構造である。

 

シンガポールに出張した時にセントレジスホテルで打ち合わせをしていたらその現物を見かけたのだが、昼下がりの高級レストランで3名の日本人駐在妻がべちゃくちゃべちゃくちゃとしゃべっている。

 

その内容は「おくさま〜、英語がとっても素晴らしいですわね〜どちらで学びましたの〜」とめくそがはなくそを褒めて、「シンガポールでは誰もかれも仕事が遅くて困ってしまいますわ、昨日も頼んでおいた商品がまだ届かなくて〜」と目くそが文句を言うと鼻くそが「そうですわよね〜、オクサマも駐在生活は大変ですわね〜」と言う。

 

しかし心の中では「うちの旦那たちはエリートコースで選ばれて駐在に来ているのよ、だからわたしたちもこの街に住むってのはエライのよ、ねえオクサマ」と思っていて、大事なのはそのメッセージをいかに確実に相手に伝えるかである。

 

海外において日本人が現地で日本人社会を作ろうとする行為は戦前から海外集団移民としてブラジル等では互助会として成立していたが、現在では殆どの場合が傷のなめ合い会か褒め合い会になっている。

 

冒頭で「現地の日本人はどうなってるんだ!」と怒ってた人もまさにこの点を突いている。企業の存在価値は社会貢献であるのを理解出来ないとか、褒め合い傷のなめ合いはお互いに弱くなってだらしなくなって人間をダメにするのが理解出来ないとかである。

 

日本社会で頑張って働いている人からすれば「なぜこんな簡単な事が分からないんだ!」となるが、現実はそういうものなのである。傷のなめ合いをする人たちと付き合っても得るものはない。それよりは自分の目で相手を見て同じ価値観を持っているかどうかを見極めてから個人的に付き合っていくべきだろう。



tom_eastwind at 17:51│Comments(0)TrackBack(0)

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