2011年04月29日

ニュージーランド経済リポート


当社では地元で発行される各種新聞、雑誌、テレビ発表、経済コラムなどをまとめて毎月一回定期的にニュージーランド現地経済情報として提供している。その中の一つに現地市場調査会社の発表があった。

 

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NZ地震復興の臨時課税案、国民の4割支持

市場調査会社UMRによると、NZの緑の党が提案しているクライストチャーチの地震復興を目的とした臨時課税案が国民の40%の支持を集めている。

 

UMRが行った電話調査では、回答者の40%が臨時課税または歳出の大幅削減を支持。22%が臨時国債の発行、29%が歳出の削減をそれぞれ支持しているという。臨時課税案の支持率は、被災地のクライストチャーチが最も高く49%、オークランドが最も低く34%だった。

 

緑の党は、個人所得税を年収が48,000NZドル(約310万円)以上の場合は1.5%、7万NZドル以上の場合は3%、それぞれ増税する案を提示。ノーマン副党首は調査結果について、臨時課税案に「強い支持が得られた」と主張している。

 

同党は、臨時課税で年間10億NZドルの復興資金が調達できると主張。35年間の期間限定で実施することを提案している。

 

だが、NZのキー首相は、クライストチャーチ復興のための臨時課税について、経済成長を鈍化させるとして反対しており、代わりに歳出を削減する考えを示している。

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日本では経済ブロガーの間では「最初にまずは公務員減給20%だろ!でもって公務員数20%削減だろ!それやってから増税だろ!なんでこんな大事なことをテレビでは言わないんだ!」と怒ってる記事が目立つようになった。

 

ところが政府と官僚とメディアのトライアングルは絶対に役人人件費給与削減案などのニュースを流そうとしないし討論会を組むわけでもない。

 

民主党の公約である霞が関改革にしても全く逆の動きでむしろ官僚と労働組合の言いなりに動かされて大事な国民視点が全く抜け落ちている。そして今回の原発処理費用も大震災費用にこっそり隠しこんで国民に負担させようとしている。役人は東電を天下り先として裏資金の出し手としてすべての利益を自分たちが得るが東電が損失を出した場合には自分たちが負担するのではなく国民に払わせる。

 

要するに「ここに一枚の1ドルコインがある。表が出ればこの1ドルは俺がもらう。裏が出ればお前は1ドル払え」である。やればやるほど儲かるぼったくりビジネスである。

 

同じ被災国でもニュージーランドでは半分近くの国民が「増税になってもよし」とか「歳出削減もよし」、「国債発行もあり」と支持している。そして逆に政府の方が「おいおい、増税なんてしたら経済が停滞するぞよ」と言ってる。

 

この違いは何か?それはまさに政治の違いである。ニュージーランドでは政治がクリーンである。いわゆる二世政治家もいなければ政治で飯を食う政治屋もいない。地盤も看板もカバンも存在しない。

 

基本的にニュージーランドの政治家は素人である。オークランド南部で弁護士やってた人が首相になって経済改革やったりウェリントン北部で牛飼いしてた人が首相になって労働組合改革を断行したりメリルリンチで上級副社長を務めていた人が金融危機の際に首相として旗をふる、そんな国である。

 

政治家は自分の信じることを国民に訴えてコミットメントを提出する。選挙民はそれを見てだれに投票するか判断する。政治家が素人か若いかなんて関係ない、実務はプロである官僚が行うのだから。

 

政治家は定期的なアンケートや集会など様々な機会を作って国民の意見を広く集めてこれを集約して官僚に投げる。すると官僚はそれを具体的に実現する方法、プランA,プランB、プランCなどと作って政治家に投げ返す。

 

もちろんそれぞれのプランにはメリットとデメリットがある。例えば橋を作るのであれば「まっすぐ作れば半年で1千万ドルで作れるけど環境破壊の影響がこれこれ出てくる。遠回りに作れば一年かかるし予算も2千万ドルかかる」と言った具合だ。

 

すると政治家はこのプランを国民の前に分かりやすく提示して「みなさん、どれが良いと思いますか?自分たちの世代の利益だけでなく将来の子供たちの利益も考えて判断してください。皆さんの意見をお待ちしています」となる。

 

国民からは「そんな橋は不要」から「国家予算で払うのはおかしい、利益が享受出来るのはその地域の人に限定されているのだからその地域の予算でやって欲しい」とか「2千万ドルかかっても環境を大事にしよう、その為の増税ならOKだし国債を発行すれば買いましょう」まで様々だ。

 

そのような意見を集約して国民を説得しながら最終的に一つの案にまとめていくのが政治家の力量である。大事なのは国民との話し合いや国会での議論であり根回しや貸し借りではない。

 

政治が国民の方を向いている。だからこそ国民も政府を信頼出来る。その結果として国民にとって良い政治が実行される。

 

ところが面白い事に、キーウィに「ニュージーランドの政治は良いよね」と言うと、「何だ、こんな国のどこがいいもんか、あれがどうこう、これがどうこう」とぶつくさ言いだす。

 

要するにほかの国の政治を知らないから、自分がどれだけ恵まれた民主主義と公平な資本主義の上で生活出来てるかを理解出来ないのだ。だったら日本に住んでみろ、発狂するぞって言いたいが(笑)。

 

まあいずれにしても同じ地震と対策を見比べても国家が違えばこう違うというのがよく分かるニュースだった。

 

さてみなさん、ここに一枚の1ドルコインがあります。表が出ればこの1ドルは私がもらいます。裏が出ればあなたが1ドル払ってください。どうですか、このゲーム、やりますか?



tom_eastwind at 15:28│Comments(0)TrackBack(0)

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