2011年04月30日

オークランドプラン


昨日書いた政府と国民の立ち位置について分かりやすい例「オークランドプラン」があったので書いておく。

 

オークランドはつい最近グレーターオークランドとして単一の市になり今後30年の長期都市計画の原案を発表した。

 

概略はウェブサイトに掲載されており分かりやすいようにアニメ動画になっているので興味のある方は見てほしい。

 

www.theaucklandplan.govt.nz

 

2050年には260万人が住むと予測されるこの街は実際に住んでみると分かるが、人々の顔が明るくて前向きで元気である。

 

現時点でオークランドの人口は約140万人だから、これから毎年生まれる子供や海外から移住してくる人々やニュージーランド国内からの移住者が増加するという事だ。

 

今でもオークランドの住宅は高い高いと言われているが、オークランドと言う地形は南北に細長く東側は南太平洋、西側はタスマン海に挟まれており物理的に東西に広げることは不可能だ。自然第一であるから埋め立てて土地を広げるなんて発想もない。

 

そうなると南北に延びていくしかないのだが、増えてくる人口の中には多産のパシフィックアイランダーも含まれておりオークランド南部のマヌカウシティ付近に集中する低所得者地帯に住みたいと思う人は少ない。

 

だもんで中流層以上向けの住宅開発はどうしてもは北に北にとなるのだが、1959年に建設されたハーバーブリッジはすでに老朽化しており拡幅は難しい。なので現在はトンネルを掘るかもう一本新しい橋を架けるかと言う議論になっている。

 

さらに問題なのはハーバーブリッジを渡った国道1号線はすでに車線を拡幅したのだがこれでも朝晩のラッシュ時には車通勤1時間、ほんとに痛勤となる。運転している最中にトイレ行きたくなったらどうするのだろう?

 

これは現在はPark & Ride、つまりノースショア地域の一号線沿いに作られたバスターミナルまでは自分の車で来て無料駐車場に停めてそこからはバスに乗るという方法である。

 

ただこれはバスの本数がもともと少ないし時間通りに来ないし道は平気で間違えるし夏は乗降ドアを開けたまま走ったりするし一般車を平気で押しのけてしょっちゅう事故を起こしている社会主義的発想のバス会社とその運転手の為にまだあまり普及していない。

 

(バス会社に限らずだがオークランドは時々恐ろしくなるくらい社会主義時代の生き残り労働者がいて、顧客よりも労働者が偉いと思っている節がある)

 

このように人口増加を予測しながらその対応に様々なプランを用意している。このプランをオークランド市民にインターネットで公開して、一定期間後に公聴会、修正を経て来年3月には決定される予定だ。

 

つまりこれは官僚が人口動態予測の専門家が2050年のオークランドがどうなっているかを予測して様々なプランを政治家に提案するという事だ。そして政治家はそれをわかりやすくまとめてインターネットで市民に発表する。

 

市民はそのページを読んで自分たちの意見を述べる機会を得る。その後公聴会が開かれて最終案が決定される。全員がハッピーなんて結論が出ないのは誰でもわかっている。そのあたりをどうみんなに納得してもらうかが現市長レン・ブラウンの腕である。

 

ここで知ってもらいたいのは、政治家は役所に対して基本的に人事権を持たないって事だ。役所は官僚組織として独立している。だから彼らを「首にするぞ!」と脅かすことが出来ない。つまり日本のように政治家が官僚と対決出来ない仕組みなのだ。

 

そして役所は各部署の長や高級官僚は一般公募で世界中から選ぶ。つまり今の日本で盛んに話題になる官民交流が今オークランドではすでに普通に実行されているのだ。

 

昨日まで民間人だった建設のプロが今日から市役所建設局の局長になるようなものだ。彼らの給料は非常に高く、大体15万ドル程度からもっと↑だ。最初から高い給料であるから日本のように最初は安月給でこき使われ、長く働いたらいつの間にか昇給して役にも立たないのに高い給料だけもらって最後は天下りってのとは随分違う。

 

そんな民間企業から来たら業者選定で自分の好きな会社を随意で選ぶんじゃないの?って普通の日本人なら思うだろうが、そこは政治のクリーンさが常に世界のベスト3に入る国だ、賄賂なんて非常に考えにくい。

 

工事はすべて入札でありデータはすべて公開されるから変な事したら一発で告発されてせっかくの仕事を棒に振ることになり周囲からも「あ、あいつだ〜」となるので住み辛くなるのは確実。そんなしょうもない賄賂で職を失いメンツを失いなんて出来るわけがない。つまりシステム上賄賂を貰いにくいのだ。このあたり、日本の役所と全く違う。

 

そして数年働いたら高級官僚でもその時の気分でまた民間企業に戻ったり全然違う仕事を見つけたりして職場を去っていく、だから日本のような天下りはあり得ない。

 

国民は政治に参加することが義務であることをよく理解しており彼らに選ばれた政治家が官僚に問題点を提起して、官僚はそれを公平な立場で解決策を示す。

 

官僚は政治家に解決策を示したらそれで完了(笑)。あとは政治家と市民の対話である。このように政治風土そのものが最初からクリーンになっているしシステム的に汚れないようになっているから汚職の問題も起こりにくい。

 

何よりも大事なのは市民が常に政治を監視しており市民が社会の中心であり市民の権利を守るために政治に参加するという発想があることだ。

 

日本に住む日本人が持つ政治参加意識は結局社会全体に反映される。昔の日本は経済一流政治三流と呼ばれていた。今は経済二流政治三流である。

 

ある意味国民が政府に向かって文句を言うのも天に向かってつばを吐きかけているようなものだ。吐いたつばは自分の頭に降りかかってくるのだ。

 



tom_eastwind at 11:58│Comments(0)TrackBack(0)

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔