2011年06月03日
離れですき焼き
★記事開始
政府は3日午前、東日本大震災の復興財源捻出に向けた国家公務員給与削減法案と、国家公務員に労働協約締結権を与えることを柱とした国家公務員制度改革関連法案を閣議決定した。
政府・与党は今通常国会での両法案の成立を目指すが、野党の協力を得られるかどうかは不透明だ。
今回の給与削減は、人事院の給与勧告に基づかない初めての措置となる。一般職の国家公務員を役職で3段階に分け、2013年度末までの俸給月額について、課・室長相当職員以上は10%減、本省課長補佐・係長相当職員は8%減、係員は5%減とする。また、ボーナスは、一律に10%減らす。政府は当初、一律10%減を目指したが、若年層に配慮した。これにより、人件費は全体で7・8%減となり、毎年2900億円を復興財源に充てることができる。
(2011年6月3日12時10分 読売新聞)
★記事終了
この記事はこう読む。
★日本最大の労働組合である官公労は管+仙谷が政権にいる間に長年の悲願である「労働協約締結権」を勝ち取るために2年間の給与引き下げと言う交換を提案した。2年間5%削減と言いながら物価下落に伴う国家公務員の実質賃金はここ数年「上昇」しており5%の2年等たいしたことはない、3年後に自発的に賃上げすれば良いのだ。それより「一生もの」の労働協約締結権の方が数百倍の価値があるのでこの取引による官公労の利益は計り知れない★
この記事には伏線があり、「ついでに人事院を廃止すれば?」と提案したらこれまたOKが出たようだ。戦後60年以上にわたって政府と人事院のくびきに縛られていた最大かつ強力な労働組合がこれで完全に解放されていく。
じゃあ組合が時限賃金引き下げをしてでも欲しかった労働協約締結権とは何か?これは昔から言われている言葉で簡単に言えば「スト権付与」である。つまり役所も民間労働組合と同じようにストライキ打ったり団体交渉する権利が出来るということだ。
ではこれで具体的に何が起こるか?非常にかいつまんで言えば
1・今まで違法に闇専従として市役所職員や学校教員でありながら仕事をせずに組合活動ばかりをしていた人々の活動が合法にできる。
2・入学式や卒業式での君が代日の丸集団ボイコットが可能になる。
3・36協定により残業拒否が出来て仕事を遅らせるサボタージュが可能になる(結果市民サービスが大幅に低下する、今もどうだかだが今以下になるって事)。
4・官僚決定事項に対して労組が発言権を持つ事が出来る(民間組合が経営者と話し合いをするようなもの)
5・組合員(組織率)の増加
そして彼らがストを打てば
1・戸籍謄本も転入届も失業保険申請も受け取りもこの期間はすべて不可能になる。
2・市役所がごみ回収をしている街ではストライキの期間中ごみが表に出っぱなしになって街がくさくなる(イタリアで昔よくあった)
他にもたくさんあるが、やはりとくに大きいのがやはり「4」である。日本政府と言えど実動部隊は自治労である。霞が関が何を決めても「いや、出来ません」と言われれば経営者である政府は困ったちゃんになるので仕方なしに国家レベルの決定事項に労働組合の意向を汲むようになる。
さて、ではその労働組合、特に仙谷さんの出身である自治労21世紀宣言を読むと
自治労21世紀宣言
1. わたしたちは、「自由・公正・連帯」の社会の創造にむけ、国内外の民主的な諸団体と連携して労働運動の前進を期す。
1. わたしたちは公共サービスを担うすべての労働者・労働組合を結集し、対等な労使関係を確立して組合員の生活と権利の向上をはかる。
1. わたしたちは市民と労使の協働で、有効で信頼される政府を確立し、市民の生活の質を保障する公共サービスを擁護・充実する。
1. わたしたちは、自治・分権改革の進展にたゆまず努め、参加と自己決定による自立した市民社会、生活と労働の調和する男女平等参画社会を実現する。
自治労の2番目の方針を見ると明確だが、対等な労使関係とは使用者である政府と対等の立場を確立する、つまり影の政府にでもなれると言ってるのだ。同時に「組合員」の生活と権利の向上をはかるのだが、これ簡単に言えばもっと休みを増やして給料を増やすことである、それも「組合員だけ」である。
これを見ても分かるように自治労の視野にはその間接的雇用者である市民が全くない。
株式会社に例えて言えば市民は最初にリスクを取って投資をしている資本家である。そうだろう、何せこの政府が役に立つか、役人が金を払った分だけ働くかも分からないうちから先行投資をしているのだ。
そのお金を預かって運用しているのが社長や役員にあたる日本政府である。そして自治労は会社に雇われた社員だ。
ところが今話されていることは雇われ社員が社長と同じ権限を持って株主配当前に利益を山分けしようぜってことである。自治労の綱領に株主である一般市民は存在しないのである。
今回閣議決定された「交渉権」はどこの新聞も小さくしか報道しておらず中には全く触れてない新聞もある。その新聞しかとってない人は今回の事件が起こったことさえ知らないだろう。どこの新聞もまるでたいした事がないように書いているが、この権利を勝ち取るためだけに昭和後期には「スト権スト」を打つほどの一大事であった。
社長と従業員は誰しもが知っているが株主には教えないままに、こそーっと自分たちの取り分を増やそうとしている。またも、国民が母屋でひもじい思いをしているときに組合と政治家が離れですき焼きである。