2011年06月17日
人種のるつぼになりかけのオークランドについて
(現地生活記録なのでショートランドストリートなどに興味がない方は飛ばしてください。)
そろそろ季節の変わり目だ。毎年5月になると天気予報は「今朝は空が真っ黒になるほどの大雨、その後太陽が出てから強烈な晴天、その後強い風が吹いてから強烈なスコールが降りそのすぐ後には晴天となるでしょう。夕方から夜にかけて強い風が吹いて雨が降ります。気温は17度前後でしょう」
そして6月になると本格的な冬の気候になり安定した冷たい空気が南から入ってきて気温が15度前後になる。とは言っても朝方は霧が発生することも多く10度前後、太陽が昇ってから17度くらい、夜になると9度くらいに下がる感覚だから肌が刺激されて気持ち良い。
オークランドの季節は二季と言われる。夏と冬の繰り返しって意味だ。その代わり一日で寒暖の差が激しく今日も一日で四季があるオークランド、傘なんて要らない、てかこんな天気で傘さしても吹っ飛ばされるだけだし雨が降れば雨宿りすればいいだけだ。仕事はこの雨降り、少々遅刻してても誰も気にしない。
冗談抜きにビジネスの面談予定でも、雨が夕方に降ると「あ、ごめん、今日は雨きついしこのまま帰るわ、じゃあまた明日にでも!」なんてのが平気で言えることもあるくらいだ。
5月から6月にオークランドのダムはたっぷりと雨を溜めて上水道に提供したり水力発電に回されることになるので「今年も安い電気代で生活出来るし水なんてただみたいなものだからほんと、いい街で生活出来てるね、らっきー!となる。
ところが同じことを違う書き方をすると「今朝はどしゃぶりの大雨でうざし、ちらっと見えた太陽もすぐ雨雲にかき消されてさ、とんでもない大風が吹いてまたも土砂降りで気分は暗くて、日が沈むころからまた土砂降り、料理作っててもいつ停電するか分からない、まったくうんざりするような季節だな、これが9月後半まで続くとなるのだから全くもうやってられないよ、文句たらたら」となる。
どっちも同じ自然現象を見ているのだが、見る角度が違う。人生をどの角度から見るか。自分を幸せにしたいのか?だったら自分を幸せにするように考えてみればよい。何かあればすぐに暗い面だけに目を向けて悲観的になり明日はもっと暗くなるだろうと落ち込み、けれどそれに対する準備をしようとは考えもしない。
毎日だらだらと生きながら文句ばかり言って自分では何も変えようとしないのなら、そんな人が幸せになれるわけがない。
「ショートランドストリート」と言う超退屈で超長長寿番組がある。最初から最後まで何を言ってるのか何を言いたいのか全く意味不明で、あんなのをまともに見てたら退屈病で死んでしまうのではないかと思うのだが、どうやらイギリス気質のキーウィにはこれが大人気のようである。
底抜けに明るいキーウィでもこんな番組を見るのかと思えば、やっぱりファンの多くはキーウィを含む英国白人移民であり彼ら英国からの移民は元々が英国の一年中憂鬱な曇り空と雨雲とうす寒い天気と北海の黒い海を見て育って、おまけに食い物と言えば芋とくそまずいふにゃくれたローストビーフ(それでもあればまし、通常は豚肉のみ)と言う生活を何百年も送ってきたから、こんな薄暗い退屈な番組でも楽しめるのだろう、てかこの番組には彼らの薄暗い心情を駆り立てる何かがあるのだろう、まさに国民性と言うべきか。
薄暗い天気に嫌気がさしてニュージーランドに移住する英国人は毎年約2万5千人。彼らは心の中では「おれっち宗主国出身だもんね」というのがあるが地元キーウィの前では絶対に言わない。けどぼくら移民同士でおしゃべりをする時は結構気楽に「バカキーウィがさー、約束も時間も守らない、それでいてけろっとしてる、全くだっさいんだよね〜」と平気で言ってる。
そんな連中でも夜になるとソファに横になりながら枕を抱えてダークビールを飲みながら「ショートランドストリート」を見て「おお、すばらっしい」とか涙流したりはらはらしながらなんだから、何てか笑える。
ある意味英国人は先の先まで見通す訓練を1700年代のパックスブリタニカ時代から続けて来たから人の人生は浮き沈みを知っており、現実の重みを背負って生きているからキーウィの底抜けのバカ陽気さにはさすがについていけず夜は「ショートランドストリート」を見ながら故郷を思い出しているのかもしれない。やっぱり根暗か(笑)と思ったりする。
ニュージーランドの人口における白人率は75%。これが十数年のうちに65%にまで落ちてアジア人が増えるだろうというのがニュージーランド政府の見通しである。そしてこれをどう捉えるか、つまりガイジンに対する恐怖とみるか、人口が増えてビジネスチャンスが増えるとみるのかで全く答えは変わる。
国民戦線と言うバカ右翼がアジア人台頭にびびっているが政府は慎重に受け入れ増加をしようとしている(もちろん、できれば中国人少な目・笑)。国家の将来を理性で考えれば世界の国際化は避けられず、世界と強調しながら平和と繁栄を呼び込むには今の時代はアジア人と組むのが正解、そう理解しているのが現在の政府である。
移民法が今年の7月でまたも大きく変更される。細かい変更を入れれば3か月に1度は変更されている移民法だが今回は投資家枠の部分に大きく変更が加えられている。ただ当然の事ながら6月末までに申請すれば6月までの法律、7月に申請すれば新しい法律の適用となるので日本のように遡って法律無視!なんてのはないのでそれは大丈夫だ。
理性と知識でアジア人と手を組んで21世紀を生き残っていこうとするキーウィ、けどその中にある心情ではやっぱりダークビールを飲みながら「ショートランドストリート」を見てどきどきして、最近は番組内にアジア人俳優とかも出てきて、おおお、どうしよ〜なんて悩み考えしているんだろうな。
彼らの心情に対してぼくらアジア人が取るべき態度は礼節と笑顔であろう。この二つがあれば彼らとも楽しくやっていける。最近やってくる大陸中国人を見ていると礼節の言葉が生まれた国から来たのか?と思わせるほど態度が悪い。インド人は自分のことを1.5級市民とでも思っているのかアジア人に対して横柄な口のきき方をする。これじゃ仏教がインド人に呆れてお釈迦様と一緒にアジアに移住したのがよく分かる。
そう考えると、日本人は自分自身気づいていないだろうが実は世界で一番まともで礼節を心得た人種である。仏教精神が一番根付いている先進国は実は日本ではないかと本気で思う。
朝8時30分、みゆきを学校に送ってちょっと時間があるので会社の一階のスターバックスの大通りに面したソファに座ってイングリッシュブレックファーストティー(Venti)を飲みながら、カフェの入り口で寒そうに厚着をして新聞を売るインド人、土砂降りの雨の中を傘もささずにうひゃひゃと笑って信号を渡るスーツ姿の中年キーウィ、フーディをかぶってラップ踊りながら歩いてるマオリの若者、襟を立てて傘をさす中国人を見ていると思わずこの人種多様性に「昼は勤王飲めば佐幕」と言われた山口容堂を思い出す。
アジア移民を受け入れるキーウィも英国人系も、毎日の現実生活と言う理性とマオリから奪った土地と言う認識を持たないまま自分たちがこの国の主人公なんだぞって感情のはざまでいろんな事考えながら、昼間はビジネスとしてアジア人をにこやかに受け入れ、夜になると「何だ周りを見たら黒い頭のアジア人ばかりじゃねえか、昔が懐かしいな!」とか思い出しているんだろうな。