2011年06月22日

撞突きの玉

★記事開始

普天間移設先送り 日米閣僚会合 辺野古はV字案に絞る

(2011年6月22日朝日新聞より)

日米両政府は21日午前(日本時間同日夜)、米ワシントンの国務省で外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)を開き、共同発表をまとめた。沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設問題は、同県名護市辺野古に「V字」の滑走路を持つ代替施設をつくることで合意し、自公政権時代の案に戻った。移設目標は日米で合意していた2014年を先送りした。

 松本剛明外相と北沢俊美防衛相、クリントン国務長官とゲーツ国防長官が出席し、日米同盟の深化、拡大を確認した。V字滑走路は自公時代の06年の2プラス2で合意したが、09年に「県外移設」を掲げる鳩山政権が発足し迷走。10年5月に辺野古へ回帰し、8月末の日米合意で「V字」「I字」両案が併記されたが、今回は「V字」に絞り込んだ。

★記事終了

 

2プラス2は学校では4となる。しかし政治の世界では2プラス2=茶番となる。

 

米国は最初からグアムに太平洋の拠点を移動させることを21世紀の世界戦略の基本にしている。これは既定方針であり、米国は永遠です〜とかV字とか県外とかなんとか言ってるのは日本で沖縄を飯のタネにしている日本国防族だけである。

 

国防族の上層部はすでに米軍の意向を理解しておりグアムの移転を前提に日本側が日本の税金で米軍基地をグアムに作るという建設利権もしっかり押さえている。 その上で更に沖縄を出来るだけ長く現状維持させて利権で利益を得る為にVだの県外だの出来もしない事を時の政府や外務省を使ってマスコミに情報提供、国民をかく乱させて結果的に「現状維持」を継続させている。

 

その分かりやすい例が今回の「2014年までに作ると言ったのはなしね、もちっと延びるからね」である。これで普天間は2014年以降更に数年引っ張れるわけで、そんなのはペンタゴンと国防族の間で水面下で決まっていることだがそれを政治家責任にする為に防衛相に米国に飛んで行ってもらったわけで、こういうのを茶番と呼ぶ。

 

ただこれで米国が損をするわけではなく、2日前の記事でも少し触れたが財政危機に陥っている米国連邦議会としては自分のカネで何かをしなくちゃいけないグアム移転よりも当面追加費用の不要な現状維持が良いので現在は日本の国防族の片棒を担いでいる。

 

しかし国家戦略としてはいずれグアムなのでその時の移転費用から基地移設費用まで全額日本が出しますとなればすぐに移転時期は決定するだろう。

 

日本は沖縄の米軍基地がどうなるかと言う事を国民視点から見ている。県外移転とかV字滑走路とか嘉手納との合併などわいわいやっている。けれどなぜ米軍がグアムに行くという話が出て来たのか?そこを突っ込むマスコミはあまりない。

 

日本人の弱い点は物事を考える時に大きな絵から細部に入る事を苦手とするところだろう。日本人は重箱の隅を突っつくのは得意だが、なぜそこに重箱があるのかとかなぜ重箱でないといけないのかとか、そういう大きな絵については考える事を得意としない。国民性なのだろう。

 

たぶんこれが純粋に国内問題ならそれで良いのだろうが、国政に関わる部分で言えば純粋な国内問題などない。

 

日本の国防。これは実は日本の問題と言うよりも米国の世界戦略の中の一つの玉として見られており、地理的には世界の中のアジアの中の日本として認識されており21世紀の米中の国境線をどこに引くか、その国境線のどちら側に日本が位置するのかによって日本の国防は大きく変わるのであり言葉を変えれば独自の国防なんて存在し得ないのだ。

 

ちなみに米国はイラク、アフガニスタン、パキスタンなど中国の西側にある諸国を中露主導の上海協力機構に任せて自分たちは太平洋まで引っ込む計画が現在進行中である。インド洋は中国が中心となり沿岸各国をアジア経済協力圏とする。

 

つまり中国を中心とするアジア圏の西の端はイラク、イランまでであり(トルコがどうなるか、イスラエルをどうするかは未定のようだ)、反対側に目を向けると太平洋の国境は日本列島の東側、小笠原諸島あたりから南に線を引いてインドネシアまで続く国境線になる。

 

米中の考える新しい国境線は現時点では太平洋のグアム島までが米国、そこから西は中国と言う認識、つまり日本は大きな意味で中国をリーダーとするアジア圏に包括される。

 

これは日本が「やだやだ、ぼくちゃんアメリカさんが好きなんだよ〜」なんて言ってもどうしようもない。大東亜戦争で壊滅的に敗北して戦勝国である米国と中国(戦勝国と言えるかどうか疑問ではあるが)に挟まれた日本は自国で独自の国防と外交を展開することは実質的に不可能になっている。

 

それは戦後の日本が米中によって真っ二つに裂かれてしまい、さらに金儲けの為に外国と手を組んで活動する学者や政治家や文化人や評論家やメディアが国論をいつまで経っても一つにまとめさせないようにしているからだ。

 

国家の統治の基本は分散統治である。民を一か所に集めてはいけない。ばらしておいて意見を集約させずに個別に利害関係を作り出して民が互いに喧嘩するような仕組みにすることだ。その国家を米中どちらが取るにせよどちらにとっても不利な事は日本人が一か所に集まり日本人としての独自意見を持つ事だ。

 

そうさせない為に右翼をコントロールして愛国心を駆り立てたり適度に労組に基地反対のデモを起こさせたりしながらテレビでは文化人や評論家が「米国なしの日本なんてあり得ないだろう!東北大震災でも米軍さまの強さがよく分かったろう!」と全然関係ない事を我田引水して、いつまで経っても日本の意見をまとめさせない戦略だ。

 

今の沖縄問題を考える時に「あいや〜、沖縄の人が可哀そうだよ、基地を県外にしようよ〜」なんて言っても意味はない。世界レベルの国境策定の中で日本がどうあるべきかを日本抜きの世界が決めているのだ、そして日本の支配層はそれに対して「いないふり」をしている。日本国内の一部お涙ちょうだい連中が自分だけは傷付かない損しない一時的な感情論で何を言っても沖縄問題が変わることはあり得ない。

 

世界戦略の中で二大強大国に挟まれた日本は撞突きの玉のように振り回されている。それはパキスタンやアフガニスタンも同様である。どこの国も内部でもめている限り独立国としての主権は守れないし、いつまで経っても撞突きのプレイヤーにはなれない。

 

じゃあいつになればプレイヤーに参加出来るのだ?戦前の日本のように白人優勢社会の中で一定の発言力を確保しようとしたプレイヤーのようになれるのだ?

 

答はあるのだがその答を得る為の努力よりも、やっぱり日本人は思考停止だけど毎日食い物を与えてくれる仕事がありコンビニがありエロ朝刊紙がありゲームがある、何も考えなくても良い今の生活が好きなのだろうし、「そう」であって欲しい日本の支配層が「そう」なるようにコントロールしているから、今の状況が続く限り、残念だが何も変わる事はないだろうし「そういう状態」の方が多くの日本人にとっては幸せなのかもしれない。



tom_eastwind at 11:15│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 日本ニュース

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