2011年06月25日

ドメスティックエリート 士業の行方

日本の会計士は現在約2万人。これを政府は2018年までに5万人に増やすとしたため会計士の試験を合格しても仕事が見つからない就職浪人が生まれるとの日経ビジネス記事。

 

・・・最初はよく意味が分からなかった。就職浪人ってどういう事?会計士の資格とは一定の会計知識を持つ人に対して発行される国家資格ではないのか?

 

つまり会計士の需要があるかどうかではなく会計を処理する能力があるかどうかの試験であり、雇用需要には関係のない、自動車の運転免許と同じであると思っていた。

 

自動車の免許を取っても運転しない人もいるだろうし免許を取って就職出来なかったと問題になる事もない。だれしもが社会で生活をする際に公道で車を運転するなら運転ルールを身に付けましょうっていう能力試験なのだからそれで車の販売台数が増えるとかどうのと言う話にはならない。

 

ところがなぜか公認会計士となると「資格保有者が増えると仕事が減るだべさ、だから数を増やしちゃいかんべや」となるのか?

 

これは実は弁護士業界でも同様であり、法科大学院が急増することで弁護士が粗製濫造されるとか言ってた弁護士の寄り合い(正確には法曹協会)もその発言目的は「新規参入の締め出し」であり「自分たち少人数の既得権益の山分けに政府の力を借りている団体」である(でしかないと書くと真面目にやってる弁護士さんに悪いので少し遠慮して書く)。

 

自分の仕事に自信があれば競争相手が何百人いようと負けるわけはない、常に誰よりも良いサービスを提供していれば顧客は自然とついてくる、そういう「普通の人々」の「普通の感覚」で仕事をすれば良い事なのに、なぜだろう、自分の提供するサービスに自信がなくて顧客がいつ逃げるか不安だから法律で政府に守ってもらおうという発想なのだろうか?

 

会計士は政府の決めた数字を組み合わせて「ごーほーです」とか言ってるがそれは政府が認めたかどうかが問題であり合理的であるか法的に正しいかどうか、ましてや包括的に解釈した事実かどうかは問題ではない。

 

ライブドア事件の前後に発生した大手証券会社の不正事件や銀行の粉飾決算などは確実に法律違反でありながら政府が認めているから犯罪とならないのが良い例だ。

 

法律上は合法でも政府がダメと言えば違法になり、違法合法の判断を政府の代わりに下すのが政府に「免許」を貰った人々であり彼らは見返りとして既得権益を政府に守ってもらった。

 

ところが長年この規制で守られていた業界は世界が標準化する中で次第にその分厚い壁を壊されかかっている。会計制度で言えば世界標準のIFRSが導入されて「日本だけ特別です」はもう通用しなくなった。法律でも外国人弁護士が日本で営業出来るようになった。

 

もともとこのような「士」業はサービス業であり実業を行うモノを作り出すビジネスをサポートするのが目的であったにもかかわらずいつの時代からか免許持ちの方が真面目に額に汗して働く人々よりもエライような雰囲気が出てきて、それがさらに法律で守られているものだから肝心のお客様向けサービスが低下してしまい「どこを使っても同じ」業界になってしまったのだ。

 

ただ世の中は変わってきている。最近は政府に縛られる保険医療を使わない開業医も出てきてまさに自分の腕一本で食っているし税理士にしても弁護士にしても政府の免許に守ってもらうのではなく自分たちで切り開いていこうとしている。

 

いつも思う事だが政府に守ってもらおう、そう思った時点で人間は守りに入っているのではないか?税理士、弁護士、多くの人が政府に逆らう意見を出そうとしていない。

 

けれど政府はあくまでぼくら市民の使用人であり彼らが主人ではない。例えて言え主人が家事の手抜きをした結果として使用人に付け上がられて挙句の果てに免許を「与える」なんてえらそーな言い方をされているのだ。そんなの、腹が立たないか?腹が立つなら政府に頼らない事だ。苦しくても自分の二本足で立ち続ける事だ。

 

昔の日本には武士と言う階級がありその階級に生まれさえすれば飯が食えていた時代もあった。しかしいつの間にか武士業は成り立たなくなり明治時代になって一部の武士だけが新しい時代に適応するように自分を変化させていった。変われなかった武士は滅びるしかなかった。

 

士業の未来がどうなるにせよ、そこには常に需要が存在するのだ、外国人に乗り込まれて仕事を座して仕事を失うような真似をするのではなく、もっと自分に自信を持って自国政府に堂々と意見を言えるようになり、外国にもどんどん出て行って苦手な英語の壁を乗り越えてインド人みたいに喋りまくって中国人みたいに商機を見逃さずに世界に出ていけば勝ち目はある。

 

 



tom_eastwind at 15:30│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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