2011年07月27日

移民の扉が閉まる時

ニュージーランドで新しい移民法が発表されて、主に投資家部門でのビザ申請が緩和された。日本人が永住権取得可能性が高い国としてニュージーランドを目指す人が多いわけだが、欧州で起こったような過激な自民族主義が台頭してくると移住受け入れに対して厳しいルールが適用されるようになる。

 

元々ニュージーランドは誰の国でもなかった。先住民族であるマオリは土地所有の概念を持たない原始共産主義でありそこに個人所有と言う概念を持ち込んだ英国人によって土地は一旦マオリのものとされて更にそれを1840年に英国植民地として売買を可能にしてそれ以降は白人が要領よく土地をマオリから奪っていきそれが結果的に1860年代のマオリ土地戦争を発生させた。

 

当時のニュージーランドは1860年代に南島のダニーデンからクイーンズタウンにかけてゴールドラッシュが始まり多くの人々が世界中から集まってきてその中には清朝時代の中国人も多くいた。彼ら中国人はゴールドラッシュが終わった後もダニーデンで商売を始めて住み着き、1890年代からは当時の流れで中国人排斥が強まり新規に中国人が入ってくることはなくなった。ダニーデンに古い中国人が多いのは当時のゴールドラッシュが理由である。

 

移住は欧州移民を中心にしてキリスト教価値観を共有出来る人々の社会が構築され、戦後の労働者不足の際はパシフィックアイランダーが働き手として近くの島から移民としてやってきた(これが結局今の働かない連中の起源であるが)。

 

中国人を含むアジア人に移住の門戸が再開されるようになったのは1980年代後半の至上主義導入からでありそれもまずは留学生の受け入れやワーホリの受け入れからである。1990年代には多くの香港人(香港の中国返還を嫌った人々)を含むアジア人がやってきたが当時はまだ経済が現在ほど発達しておらず奥さんと子供だけをオークランドに残して旦那はまた香港に戻って働く「大空人」が多く表れた。

 

結果的にアジア人の増加でニュージーランドの景気は急激に発達してこれが現在のペンシルマンション開発に繋がったが普通の人々からすればあまり土地開発の恩恵は受けられずに街中を大手を振って歩く中国人に対して批判が集中した。

 

移民政策は国家にとって大事な問題である。他国の人々をあまり増やすと自分たちの価値観に影響が出るのではないか、古き良きキーウィスピリッツがなくなるのではないかと考える人々と、常に世界の変化を受け入れながら積極的に世界と関与していこうとする人々の間で移民政策の細かい部分の「調節弁」が開いたり閉じたりする。

 

今はニュージーランドの受け入れ窓口は英国圏5カ国の中では最も緩いものとなっているがこれもいつまでも同じ政策が続くわけではない。ノルウェーのような事件が起これば政策に変更も出てくるだろう。

 

それはぼくら日本人にとってはもしかして受け入れが出来なくなるって事になるかもしれない。だからぼくはいつも「永住権は、取れる時に取っておきましょう、数年後に滞在日数が不足して永住権が消失するにしても、数年後に今と同じルールがあるとは限りませんから」と話す。

 

移住と言うドアが閉まれば日本から出ることは出来なくなる、つまり日本政府の言うがままに従うしかないのだ。これから先日本の向かう方向がどうなるにせよ、それは消費全増税と資産家向けに資産税導入及び相続税増税が前提となる。つまりどれだけ日本で稼いでも結局は政府に全部吸い取られてしまい政府のしりぬぐいに使われてしまうのだが相手が法律を決める権利を持っている限り抵抗しようもないのだ。

 

ぼくが1980年代に永住権を取得してからも様々な変化はあったが今考えてみると結果的に良い国の良い街で生活基盤を作り、人種差別に困る事もなく、てか日本とニュージーランドと香港の国籍を持っていつでもどこでも動ける選択肢を持つ事で日本政府相手にも言いたい事が言えるようになった。

 

政治が嫌ならその国から出てけばよい、ただそれだけであるし仕事は世界中どこにいても出来る。ぼくの世代ではそんな自由を自分で確保出来たし子供は更に進んで三か国の国籍を持ち四か国語を話すようになった。それも最初に永住権取得をしたからだ。

 

子供に何を残せるかは常に考えておく必要があるが西郷隆盛は「子孫のために美田を残さず」と言った。事実である。結局金は誰かに盗まれる。しかし市民権や語学力や知識は盗まれる事はない。出来る時に出来る事をする、後回しにしない、ただそれだけだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



tom_eastwind at 16:12│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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