2012年09月13日
機内にて 厳しくなる保安
「あなたの冗談を私はまじで受け取りますよ」“I’ll take your joke seriously”
オークランド空港の荷物預けをする場所などにシールが貼られている。最近の安全運行に関する管理規定は実際に冗談で通じなくなっている。
これはキーウィがジョークdaisukiだとかオージーのジョークがあまりにブラックすぎるってのもあるが、基本的に世界的な風潮である。
たしかにキーウィは空港の超過荷物預けで「中に何が入ってるの?」と質問されるとにこっと笑って「羊!」とか言ってる。これがオージーだとにこっともせずに「サダム・フセインの遺品」とか全然笑えないブラックジョークを放つ。
これも1990年代ならばジョークで済んだ話であるが、国際テロが頻発して世界がきな臭くなり、それに更にネットで爆破予告が出てくるようになると昔のように「ジョークでした〜わっはっは」では通用しない。最近でも国際線航空機の爆破予告をネットで書き込み飛行機が緊急で戻ってきて書き込み者が逮捕されたりしてる。
ぼくは仕事柄いつも飛行機に乗っているが今回オークランドから香港に向かう飛行機の中でも冷っとしたことがある。それは機内で出されたお酒。
基本的にぼくは人の言うことを真に受ける癖がある。だもんで飛行機に乗り込んだ時にいつものようにCA(キャビンアテンダント、つまりスチュワーデス)が「どうぞご自由に」と飲み物を勧めてくれる。そこでぼくはウイスキーの水割りを注文する。
最初の一杯はにこにこ、食事中の一杯もニコニコだが、食後もグラスを手放さずにお酒を注文していると、最初はだんだん苦い顔だったのがそのうちCAの女親分が出てきて「あんたさ、いい加減にしてよね、もうボトル半分飲んでるよ」というものだから「おお、まだそれくらいか、早く飲まなきゃね」と笑って言うと女親分本気で怒りだして「あんたちょっとこっち来なさい」とCA用座席に呼び出しを喰らってしまった。
ぼくも苦笑いしながら「けどさ、飲んでいいって言ったのはそっちだよね、それに人によってお酒の消費量は違うわけで、ぼくはボトル半分ならまず酔わないから例え機内と言えど問題ないのは今までの経験で知っている。ぼくはすでに何度も実証済の酒量以内にしており、初めて会ったあなたに理解出来ないのはわかるが、それはあなたが知ってる世界が狭いのが問題であり僕の問題ではないよね」と返した。
それからも何度かこのようなしょうもない言い争いを続けたのだがこっちは終始笑顔、本気で怒るようなこともない、長時間のフライトで時間つぶしにちょうど良い「英語で議論の他流試合」くらいの感覚で相手にしてた。要するに相手を言い負かす議論ではなく長期化させることにポイントを置いた戦略である。
すると彼女、からかわれてるのに気づいたのかよほど腹がたってしまったのだろう、遂にチーフパイロットを呼び出して来て「ねえ、この乗客を怒ってよ!」みたいな、まるで子供の喧嘩に親を呼び出すような話になった。
国際線航空機の中では機長に最高権限が与えられておりその判断は強制力があり必要があれば到着空港で警察を呼ぶことが出来る。まさに「冗談では済まない」話になる。
ガタイの良い白人パイロット、ぼくの顔を見るなりいきなり「おいおい、ここはバーじゃないんだ、いい加減にせんかい!」と言ってきた。言葉は少しきつかったが顔はけっこう笑っており、CAの親分の見えないところでは僕に向かって喉を人差し指でカットする仕草で、どうやらこのCAの女親分、随分うるさ型なのだろうな、キャプテンの「世の中で一番始末に終えないのは女さ」って態度には思わずこちらまで笑ってしまった。
けどそうは言ってもこちらはパイロットを立てなければまさに「あなたの冗談を私はまじで受け取りますよ」って話になる。だもんで僕も「はいはい、もう飲みませんよ、コーシー頂戴な〜」ってところで席に戻った。
飛行機一つをとっても冗談の通じない世界になったと言うべきか、いつの時代もウルサイのはこーいう人種というべきか、残りの飛行時間はコーヒーを飲んで過ごすことになった。よいこの皆さんは飛行機の中で喧嘩を売る際は勝ち目のある時に限定しましょう(苦笑)。