2012年09月20日

象の形

木曜日は一日中喋り過ぎで喉が痛くなった。この日は午前と午後にそれぞれ別の弁護士事務所との会議。一つの事務所で3件くらいの案件を話すのだが、どれもこれも重厚な案件で、ほんとに脳みそが痛くなってきた。

 

6個の案件はそれぞれに内容が全く異なっており、投資家、起業家、どの案件を取ってもどういう風に相手に説明するかで全く話が異なる、まるで目の見えない人に象を説明するようなものだ。

 

こういう時は相手の理解度をこちらが理解して相手の理解出来る単語を選んでこちらが伝えたい部分だけを余計なことを省いて説明する必要がある。どこの国でもそうだが弁護士は自分が賢いと思ってるし何でも知っていると思いこめる素養がある。

 

自分が住んだ事もない東洋の島国で1億2千万人が生きて様々な生活様式を築き上げており、それは人口400万人の南太平洋の小島では思いもつかないビジネスがあるのだが、それを理解出来ないって事を認めようとしない。

 

とくにこれは男性弁護士に理解不能傾向があり女性弁護士の方が受け入れ幅が広くて柔軟に理解しようとする。洋の東西を問わず賢きものは・・・というところだろうか。

 

しかしそのような彼らを怒らせずぼくらの意思を正確に伝えていくのが仕事だから堅い話の最中にも軽い冗談を入れるのは大事だ。

 

例えば顧客の家族構成を伝える際に「えーと、この顧客男性には現在小学校に通ってる子供が二人、奥さんが一人、」とさらっと言うと白人は100人のうち90人はくすくすと笑って場が和やかになる。ちなみにここで「笑わない残りの10人はアイルランド人だね」みたいな事言うとますます笑いが進み場が和む。

 

ちょっと話はそれるが冗談と言うことで一つ。ある時送迎ビジネスで成功している地元の白人ビジネスマンが自宅を新築して僕らを招いてくれた。

 

新築で湖の見える立派な豪邸で、にこにこしながら「ここがリビングルーム、ここがダイニング」そして「こちらがマスターベッドルーム、僕の部屋だ。隣が奥さんのベッドルームだ!」と言って一人で大笑いした。僕ら招かれた日本人は笑っていいのやらかなり迷ったものだ。

 

これが文化の違いである。文化の違いを否定したり自分の文化を優秀と自慢するだけでなくお互いの文化の違いを認めてそれを笑いながら受け入れて2つの文化を理解して使い分ければ楽しく共存出来る。

 

話は戻って弁護士との会議はどんどん続く。弁護士はキーウィ白人もいれば香港系キーウィもフィリピンキーウィもいるわけで、これも相手に応じて話の切り口を使い分けるのが相手の理解度を高めるポイントになる。

 

象を説明するのにでかい足から話を始めるか長い鼻から話を始めるか、それによって相手の印象は全く変わる。ぼくにとって最も重要な会議だから力が入るし相手の目を見ながら理解度を一つ一つ確認していく作業でこと細かい点まで適切な単語を選んでいくので相当に神経を使う。

 

これは日本での説明会やその後の個人面談でも同様だ。初対面の人からどこまで相手の状況を読み取るかは目をつぶって象を触ってその全体像を理解しようとするようなものだ。これは弁護士とのやり取りと正反対の作業になる。

 

殆どの日本人は初対面の相手にありのままの話をすることはない。だから最初の話し合いで僕が一番気をつけるのは相手が何を話したかではなく相手が何を話さなかったかである。どんな人間でもある程度の共通する部分はある。

 

その、誰でも共通する部分のうち相手が言わなかった点がこちらが一番理解すべき点である。移住とは単なる引越しではなく人生の一大転機であるが一番大事なのはその人の価値観を把握してその希望する生活をできうる限り構築することである。

 

キーウィにとっては国をまたいだ引越しなどごく普通のことなので一所懸命の日本人が一所でなく二所を選ぶという重さが理解出来ない。そこをいかに説明するか、弁護士と最初の会議が非常に重要になる。かなり重くて長い一日だったけど、いずれにしても日本人5万人移住計画はまだ始まったばかりである。



tom_eastwind at 18:00│Comments(0)TrackBack(0) NZの不動産および起業 

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