2014年06月27日

戦後は終わった。

「もはや戦後ではない」1956年の経済白書で使われた言葉は敗戦後に無法状態に陥った日本が次第に闇市から朝鮮戦争、重厚長大産業へのシフトなどを行い発展した当時の日本を象徴的に表す言葉として使われている。

 

昨晩は偶然だが戦後の闇市を舞台に成長した安藤昇の映画を少し見る機会があり懐かしく感じた。安藤昇は子供の頃から喧嘩っ早く戦時中は航空隊員となり特攻訓練も受けたが終戦。それまで信じてきた天皇とか神の国とかすべて崩壊した中で焼け野原の渋谷を新しい戦いの場所として自分の腕一本でのしあがった。

 

しかしその後戦後は終わり安藤昇は脅迫罪で逮捕され出所後組は解散、その後彼は自分を主人公とした映画の主役に選ばれて!映画俳優として数本の映画に出演した。

 

敗戦後の無法状態の日本、特に焼け野原になった東京では日々の食料の為に闇市が立ち田舎に行き帯や着物を質に闇米を買う上流階級のご婦人がおどおど出てきたり、すべてが混沌としていた。

 

闇市から朝鮮戦争を経て日本の戦争処理という戦後が終わった。しかし次の戦後「混乱期」が待ち受けていた。安保条約改正と反政府学生運動、そして沖縄返還。1970年代の全学連、浅間山荘、三里塚闘争、当時を直接知る人はあの頃の日本の混乱と激動を覚えているだろう。

 

これらの「混乱期」の事件全てが政府側の勝利で終了してやっと本当の意味での戦後混乱期が終わったと言えるかもしれない。

 

しかしその後第二次世界大戦の「戦後体制」が続いた。対米従属による軽武装と経済優先政策は日本の復興と近代化を強力に推し進め1980年代終わりまで日本に好景気をもたらし世界で起こってる戦争に背を向けひたすら金儲けに邁進した。

 

そしてバブル崩壊という第二の戦後がやって来た。

 

長い戦後のトンネルを潜り第二次安倍政権が長期安定政権の予想を見せて、今年になって日本の仕組みにやはりというか案の定と言うか、様々な変化が起こっている。

 

集団自衛権を何とか押し通したい安倍政権であるが、今日の朝日ニュースで日本政府のODAに外国政府の軍事援助が含まれるとかのネタが出たり集団自衛権の話がどんどん広がっているが、どうも舞台裏ではもう「オール確定」ではないかと思わせる。

 

集団自衛権とODA軍事援助と武器輸出3原則の撤廃をすれば立派な軍事国家でありこれは安倍首相の望むところであり国民も期待しているだろう。実は僕自身も日本が防衛軍備をすることに反対はしない。

 

ただこのバランスが難しい。防衛のための軍備は必要であり無防備都市神話を夢見てたら国なんてあっという間に食われてしまうのは歴史が証明している。ただ同時に日本人はすぐ極端に走り理屈に走り現実を観てバランスをとる事が苦手だ。だから武器を持ってて中国が挑発してくると、すぐ子供のように使いたくなる。

 

これを抑えるのが政府なのだが日本的統治は上に行けば行くほど責任がなく下に行けば行くほど現場主義で一体誰が何を決めているのか分からないし何かあった時の指示系統が平時用に作られているから戦時には役立たない。

 

そこで限定的戦争のはずが拡大していく可能性が高い。特に支配層の上に行けば行くほど自分は戦場にイカないから無責任なことを何とでも言える。これも日本の歴史が証明している。

 

そして相手となる中国は今相当にヤバイのだ。ウイグル問題、不動産バブル鬼城問題、ノンバンク、共産党不信、幹部同士の政治抗争、どれ一つが弾けても一か八かで日本相手にどんぱちやらかす可能性が高いのだ。

 

だから今起こっている軍事ODA、武器輸出、集団自衛権という軍事3本の矢は日本にとってある意味自然でありこうでなければ台頭する中国をアジアの真珠ネックレス(日本からフィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシア、タイ、ミャンマー、インドと続く中国包囲網)で抑えこむことはできない。ただその時にバランスと責任感と指導力を持ったリーダーが現れてくれるかどうかだ。

 

再軍備が始まったぞ。これが第一の矢だとすれば第二の矢は内政強化、つまり治安強化だ。最初はソフトにやるから誰も何も感じないが国民総背番号制など国民一人ひとりを政府が直接監視する仕組みが構築されつつあり様々な法律が細かく変更され政府に逆らう発言は厳しく取り締まられるようになる。

 

これは全国民に対して覆いのようにふわーっとかぶさって、いつの間にかあれ?って息苦しくなってることに気づく。

 

そして第三の矢は私有財産の否定と国民全員の下向きの平等である。まずじわーりと増税しつつ私有財産を捕捉して政府の財産に移す活動はすでに行われている。

 

それは健康保険や介護法案や年金だ。私有財産約1400兆円は国民の財産であるがその個人財産で自分の両親の介護をして下さい、病気になれば自分で民間保険で治療して下さい、年金は財源がないので自分が今から貯金してください、である。

 

本来政府が払いますからみなさん若い時に政府の年金加入してくださいね、何かあったら政府が払いますよだったのが、年金財源ないので自分で払ってねって、じゃあ今まで払ってたのは何なんだ?って話。

 

ただこれは政府から見れば間接的に政府の負債を国民に負担させる仕組みであるから国民に気づかれない可能性が高いし、自分の借金を他人に背負わせるのだから政府の腹は痛まない(笑)。

「大体おかしいよ!政府が1300兆円も借金してるのに何もしない国民が私有財産1400兆円!そんなバカな話があるか!俺たち東大法卒が作った政府が赤字で国民が私有財産持つなんて許さない(恥ずかしい)!私有財産全部没収!」

「もちろん僕ら力で奪いませんよ、東大法卒ですから。ぼくらが法案を作り決定するのは政府であり国会で法案を通して法律になって後は税務署や検察や警察が法律を粛々と進行させるのみです。逆らえばタイーホですよ(笑)」

 

こうやって次第に国民は可処分所得が少なくなり親の蓄えは相続税で持っていかれ子供は何もない状態で社会に放り込まれる。

 

もちろんこのような政治予測は100%正確ではない。けれど予測はできる。いくつかのあみだくじを作り、その時その時の環境に合わせてあみだくじを進めていき、大体どの辺に爆弾が落ちるかを予測することは出来る。だから爆弾の落ちそうな場所から避ける事が可能である。

 

財政改革のネタを書いた5年ほど前は日本の改革にいくつかの方向性があった。その中の一つが増税であり一つがインフレによる政府債務の実質解消である。ただインフレは影響が大きいので政府は増税を選択した。これがあみだくじの一例だ。

 

そのあみだくじが今言ってるのは、「新しい社会」はぼくが予測した2020年よりも前倒しになるなーって予測だ。自民党は、やれるうちにとっととやってしまえ、そういう風を感じる。「光る風」が予定よりもかなり早く現実になるなー、嵐、予定よりも早いなー、そんな感じ。

 

この「感じ」は日本に出張して岡目八目で観るから感じるのでありのんびりしたオークランド日本人社会で情報収集をしてても感じられない。東京にいて定点観測でやってるから分かる。このような大きな流れが動いているのにそのカウンターパートにいる一般国民の反応が弱いから更に危険度の高さを感じるのだ。

 

やっぱり歴史って繰り返すんだな、民族の持つ個性はどれだけ時代を経ても変化せず、日本は50年単位で動く、今はまさにその変動期の入り口を観ているんだな。戦後は終わった、そして新しい戦前が始まった、そんな感じがした梅雨時の東京の一日でした。 



tom_eastwind at 10:45│Comments(0)TrackBack(0)

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