2014年09月16日
月を売った男
月曜日の午後、弁護士事務所で第一回ランドバンキング役員会を開催する。今回は初回なので関連するすべてのメンバーに参加してもらう。役員は投資家代表のぼくとデベロッパー側代表のウェリントンから出張で来た投資会社の取締役、そして当社の代理人である弁護士の三人である。
まずはお互いの立ち位置を確認して三人の内二人がこちら側なので実質的に運営主体はこちらである事を参加者全員に理解してもらい役員会議を始める。
ランドバンキングの仕組みは簡単である。ハウジングニュージランドの衣替えだ。
ニュージーランド政府は元々小さい政府を目指しており民間でできる事は民間でという考え方が徹底している。日本の住宅供給公社にあたるのがNZでは「ハウジングニュージーランド」である。低所得者の為に住宅を提供するのだが、政府の予算は使わずに投資家の資金で不動産開発をしてもらいその不動産を政府が家賃保証するのだ。つまり元金は投資家の負担で、利息を政府が払うって事だ。
ところがハウジングニュージーランドの利率は政府保証だけど4%かそれ以下である。現在のAucklandの物価上昇率5%を考えると「確実に毎年1%以上損失の出る投資」になってしまっている。そんな土地に投資をする投資家はいない。
そこで新たに投資家に向けて去年から投資対象枠として解放されたのがランドバンキングである。
投資家ビザで永住権を申請する人向けに利回り最低保証が6%として物価上昇率を上回り更に運用次第では最高15%以上の利回りを叩き出せる。地震による被害は政府保証、建物に対する被害は民間保険による保証、民間保険会社は政府が100%保証、結果的に政府保証での運用となる。
人口が毎年増加するAucklandで政府が予算を投入しない居住用不動産部門に海外投資家の資金を投資してもらい利回り7%程度実質保証でNZの永住権を提供する、これが今回の企画だ。
簡単に言えば不動産を買ってもらい永住権を売ってるわけだ。
ハインラインの有名なSF小説で「月を売った男」ってのがある。今のNZ移民局がやってるのはまさに「土地を売った男」である。
ただし誰にでも売るようなタバコ屋ではなく(あ、日本では今は年齢確認もあるのか)、あくまでも移民局が選んだ人にのみ「お困りではないですか?ビザはいかがですか?土地買ったらもれなく付いてきますよ」と声をかける仕組みだ(笑)。
面白いのはキム・ドットコムという大金持ちに「あなたはVIPだ!」と土地と永住権を売った政府と移民局が普段は偉そうに建前並べて技能移民ルールがどうこう言ってる事だ。実態としては政府は外国人に土地を買ってもらってビザを売ってるってのに表面的には上品そうに「あなたの申請書類は〜」などとやって、完全に二重標準である。
昨日もテレビでは労働党が「ジョン・キーがキム・ドットコムにビザを売った」とキャンペーンやってたが、いや労働党さん、その通り、NZ政府はビザを売ってるんですよ(笑)、そうやって外貨を稼いでるんですよね(笑)。けどそれせずにこんな小国がどうやって成長するのですか?
政府の立ち位置は時代により変化する。その変化は時代の要請である。それを理解出来る人だけが新しい時代に合わせて変化出来て生き残れるが、古い脳みそで古い考えしか正しくないと思ってる人に21世紀の大航海時代は生き残れるのか?
これは先週の地元銀行幹部との「お茶会」で聴いた情報だが東南アジアを担当するNZ移民局の担当者は現在はマレーシアに駐在しているとの事。ここを拠点に優良な移民を取り込もうとしている。
担当者のテリトリーを聴くと東北アジア(日中韓)を除いた地域との事。今回11月に僕が企画しているシンガポールと香港の日本人投資家向けセミナーもこの範疇なのでこの幹部は「担当者、紹介するから予定が固まったら連絡くれ」。狭いAuckland社会の有難いところである。
でもって日本は大使館が優良移民募集の取り組みをやっているが、じゃあ中国は?って聴くと、今は担当者がいないとの事。どうやら相次ぐ不祥事に中国人移民の危険性を十分に肌で感じた移民局の判断なようだ。
この銀行は今まで日本市場をあまり気に留めてなかったのだが最近の日本人投資家の動き、中国人のトラブルを見て、お、やべ、日本人にシフトしなくちゃって気持ちになってるようだ。
うちにとっては良いことだ。実際に最優良市場なんだから何で今まで気づかなかったのかって感じである(苦笑)、ささ、ビザ売ってくれ(笑)。
さあ、Aucklandに戻ってぐたぐたと休んでるヒマはない、死んだらいくらでも休める、やることやるぞ。