2015年10月20日

ハウジングニュージーランド

今日は地元銀行の投資家部門責任者が当社に来て彼らのポートフォリオ構築について話を聴く。国債、株、取得費用、管理費用、けど僕らにとってそういう事は大体分かっている。大事なのはそんな事よりも担当者や責任者の姿勢である。その確認が今日の目的だ。

 

ニュージーランドにおいて銀行は規模は関係ない。大事なのは担当者と責任者であるから僕が真っ先に聴くのは「あなたはこの銀行で何年働いているのか?辞める予定はあるか?」である。

 

大手銀行はほんとに半年単位で担当者が変わるし上司も変わる。その度にゼロから話をしなければいけないし前任者が決めた事を後任者が平気で覆す。そして最後は「これは当社のルールですから」となる。全然お客を見てなくて上ばかり見てるヒラメ集団である。

 

他にもいくつかきつい質問をしたが地元に根付いた銀行というだけあって答もきっちりしており、これならリストに載りそうだ。こことはすでに2年前から支店で少しづつ取引を広げており対応の良さがあるので、じゃあ投資家にも対応出来ますかって投げ込んだら「よろこんで!」二つ返事で今日の会議につながった。

 

それといくら投資家部門でVISAが取れても投資先を間違うと永住権は取れない。これ大事。債券にしても何でもOKなわけではない。投資先が適格かどうかをポートフォリオを予め組んで移民局に見せる。

 

OKが出てから銀行に指示を出してまず証券部門で債券購入作業、カストディ部門で証券保管、富裕層チームは社内を取りまとめて支店担当者を配置してチームを作ってもらう。これで受け入れ体制の出来上がりとなる。

 

不動産の話も出た。不動産も適格投資でOKになったが皆さんが思い浮かべるのが「じゃあ今既にある不動産を買って家賃収入」とか「自宅も良いのか?」であるが、これはどちらもダメ。

 

不動産がOKになったのは政府が投資家に不動産開発をしてもらいたいからだ。なので地元不動産デベロッパーと組んで新しく家を建てて売却することではじめてOKが出る。

 

政府も今は住宅供給に力を入れておりAuckland南部のパパクラ地区マクレナンという地域に政府の住宅供給公社(Housing NZ)が土地開発をしている。ハウジングNZは元々は投資家が購入した賃貸用不動産を借り入れて住宅を低所得者に貸し出して家賃をハウジングNZが保証する、政府プログラムである。

 

それが今回ハウジングNZ主導で開発からやるとなると今までと全く異なった様相が見えてくる。政府主導の不動産開発は政府保証と同義語である。そして不動産開発のボトルネックであった市役所の事前認可と建築時の検査が相当に早くなる。この許可を得るだけで場合によっては3ヶ月以上かかっていたからだ。大規模開発で政府の事前許可が出ているので家を建てるのは簡単だ。

 

更にこの地域の住宅は本来なら約70万ドル程度の物件を政府が20万ドル程度負担して約50万ドルで売りに出す。買える人は年収7万ドル(560万円)以下の低所得者で初めて自宅を購入する人に限られる。

 

賃貸に出すのはだめ、最低でも4年以上本人が住むことなどいくつか条件があるが、それでも住宅価格高騰で家を買うことが出来なかった人たちには天からの贈り物である。

 

何故なら一定年数経過後に一般市場で売りに出せば政府が負担した分が自分の収入になるのだ。こうやってファーストホームを購入してその後売却すればやっと若いキーウィでもその後のハウスホッピング(引っ越しの度に少しづつ良い物件にする)で通常の不動産市場に参加出来る。

 

格安であり政府主導の大規模開発のニュータウンという事で人々の人気を集め住宅供給公社にはすでに申し込みリストには銀行の事前審査を通った1,000人以上が名前を連ねて自分の家が手に入るのを待っている。実はこのパパクラという地域はAuckland南部のあまり治安の良くない地域である。けれどこれから500軒の住宅を建設してショッピングセンターやガソリンスタンドなどインフラ整備をしてしまえばマクレナンという街が出来上がり治安が向上する。

 

政府開発、買い手保証、後は投資家が建てるだけという非常に面白い案件である。政府による第一回目のオークションでは50軒分の区画が売りに出て、幸運なことに当社で8区画を買うことが出来たのが4ヶ月前。

 

その後それぞれの家のデザイン、8区画分の共有部分の組み合わせを終えてプリセールに出した。そして現在すでに買い手が8区画付いている。完売。後は家を建てるだけだ。彼らは予め銀行でローンを組んでいるので支払いに問題はない。

 

こういう案件はほんとに水面下でしか動かない。一般の市場には出て来ない案件で地元の限られたメンバーだけが回しているのが実態だ。これからも第二期第三期と放出されるが買い増しする予定。

http://www.nzherald.co.nz/business/news/article.cfm?c_id=3&objectid=11429699

 

なのでマクレナンの開発が新聞記事になってもそれを誰がどう開発するのかについては一切書かれてない。このあたりキーウィが「核心的利益」は絶対に自分のものにするという姿勢は明確である。常にそうだ。上記の英文記事でも

will be sold privately”となっており、この意味は「身内で回すよ」である。

 

他にも不動産開発については続々と案件が出ている。その原因の一番は、Aucklandの人口が毎週1000人増えているからだ。

 

政府からしても住宅の安定供給は国策であり人口が増えるAucklandでは喫緊の課題である。だから今まで住宅供給公社が絶対にやらなかった不動産開発に手を出し始めたのだ。

 

銀行の責任者と話をしながらこの街が発展していくのを肌で感じた。



tom_eastwind at 13:53│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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