2015年10月23日
兵法
今日はビジネスの話なので興味のない方は無視して下さい。
ある時東京の現役経営者の方に指摘された。「Tomさんさー、Aucklandじゃあこのビジジネスモデルは上手くやれるだろうけど、こんなビジネスモデル、東京じゃ一発で誰かにカッさわられて上前ハネられて終わりだよー」
ぼくは笑って返した。
「だからAucklandでやってるんですよ(笑)」
天の時地の利人の和という。戦いは時と場所を選ぶ。自分に有利な場所で戦うしその土地に合った戦い方をする。Aucklandは1996年からずっと発展を続けて現在に至る良い時だ。
Aucklandは東京のように何百万人もの日本人ビジネスパーソンはいない、ほんの数百人だ。彼らと僕とは業種が違う。そして僕は当時はNZの永住権、現在はNZ国籍であり争う人がいない。だから戦う場所が今のAucklandなのだ。
日本人はどうもこのことが分かってないようで海外進出する際も天の時地の利人の和がないままがむしゃらに突っ込んで撃沈する場合が多い。
逆に言うと兵法を理解している工場長だとメキシコに進出してもどこを現地に合わせどこに自社の利点を置くかが分かるから成功する。けど大体こういう優秀な人間は本社に楯突くことが多いので出世は出来ない(苦笑)。
兵法では左手に遮蔽物を置くとしている。多くの人間が右利きなのは2千年前から変わっていないという事だ。
明日から月曜の労働の日まで三連休だ。なので自宅に持ち帰りする紙の資料をより分けて、それぞれのファイルの左上に戦略、戦術、戦闘と書いて仕分ける。
僕にとってこの作業は紙で行うほうが全体が良く見えるので、あえて万年筆を使ってA4の紙に手書きで描く。ゆっくりと戦略を考える時はパソコンよりも融通無碍な白い紙と万年筆一本の方が効率的である。
戦略とは自分が置かれた立場をよく理解して次に何が起こるかを読み取りどちらの方向に向かうかを決めることである。
戦術とは戦略で決定した事項を時系列に落とし込みいつなにをするかを決める。
戦闘とは戦略で決めたビジネスモデルを戦術列に並べ、今どれをやるべきか優先順位を決めてそれぞれに戦闘図を作り時系列に合わせて実行することだ。
戦闘図を作るのは週末が良い。一日ゆっくり時間を使えるからだ。青空の下で自宅のソファに座ってランギトト見ながらあ〜っでもない、こ〜っでもない、と頭のなかでいろんな要素を足したり引いたりする。
そして出来上がった戦闘図には目標とする期間、投入する人員、得られる利益、予測出来る危機等が描かれている。
例えばぼくが今考えている戦略の一つがこれから増えていくAuckland在住高齢日本人に安心して日本語で過ごしてもらうサービスだ。これを戦術に落とすと来年くらいには高齢者向け出張介護サービスを開始させるという日程になる。
当社はすでに医療通訳サービスを2001年から開始しており現在まで1万5千名の患者さんに対応している。毎年約1千名が当社のサービスを受けている計算だ。
誇りにしているのはこのサービスを利用頂いたお客様には、感謝して頂いた事はあってもこの15年たったの一度も苦情が出てないことだ。これはやはり現場に権限委譲して現場が今出来るベストを尽くすという事を理解しているからだと思う。有難い。
このビジネスモデルは当初日本の損害保険会社32社との提携、Aucklandの地元病院、当社との連携がきちんと取れているから15年も続いてるサービスでありこの出来上がったインフラサービスの上に介護を載せる作業、これが戦闘の部分だ。
今年すでに何度か日本で介護業界の方とお会いして下見に来られた企業もあり、来週の日本出張でも東京でお会いする予定にしている。これで戦闘(作業)のフローチャート、誰がどんな武器を持ってどこに配置してどう攻めこむかの作戦図が書き上がれば来年から戦闘開始する。
戦闘の規模は分かっている。当初は数組程度の利用なのでその方に合う介護サービスを派遣型で行う。これを数年やってみて利用者の広がりが確認出来れば次は戦術の第二段階になり、違った戦闘図が描かれる。
戦略、戦術、戦闘、この作業を万年筆と真っ白な紙だけでやる。当社が約20年続いているのも基本的にはこの「兵法」をなんとか実行出来てたからだ。
ぼくのやってることは間違いなく現在の東京でも香港でも通用しないビジネスモデルだ。けれど天の時地の利人の和、Aucklandでは十分に通用する。