2015年10月27日

これが日本の新常態

三連休最終日のお昼は天気も良くて奥さんと二人でタカプナのビーチ沿いに新しく開業した海の見えるレストランに行く。レストランは高い天井と明るい日差しが素晴らしくフロアスタッフの接客も良い。

 

元々キーウィはフレンドリーなわけでそこに学校でホスピタリティをきちんと学んだ元気の良い若いキーウィだから短時間でお客に笑顔を振りまき軽い会話をして注文を取る。

 

大したもんだキーウィスピリット。ここまで変われるんだね。もちろん東京に比べればまだまだであるが東京にはないものがここにはある。それは青い空と澄んだ空気と心からの笑顔だ。

 

この場所、10年前は駐車場だった。料金も取らずただ置きっぱなしでタカプナの街に出てた。またはランチボックス作って目の前に大きく広がる芝生で食べてた。

 

10年経った現在、レストランで料理を食べながら景色を楽しめる。自然を守りつつ文化的生活が進化していく感じだ。

 

料理もサービスも良く奥さんと二人で「タカプナビーチは変わったよね」と言いつつ数年ぶりにビーチを歩く。するとそこには10年前と同じように家族連れでベンチに座り料理を楽しんでたり浜辺で水遊びする子どもたちの姿が見える。

 

「ビーチは、変わらないねー」二人で何となく今と昔の間を行ったり来たりしつつビーチを一回りして自宅に戻る。

 

日本のニュースにアクセスすると、沖縄の海でサメが出たとのこと。これはもうサメが出てニュースになってしまったので誰の責任にもならないように海を閉じてしまう。

 

季節外れなのでそれほど観光業界ビジネスに影響はないと判断したのだろう。JAWSとは違う。

 

しかし同時にサメが出て来ない状態で、つまりそこにいるのが分かってるのに「見えなければ良い」と考えているのが建設業界ではないか?

 

建設業界全体で「この建設コストじゃ赤字だ」と分かっていて「誰かがどこかで手抜きするな」と思ってもどうせ素人にはばれないだろうから「誰が手抜きするか聴かない」ってのもある。

 

リーマン崩壊前の当時の建設業界は小泉首相による公共事業の減少でどこの会社も人員削減経費節減建築費節減の時代だった。そんな時に大型タワーマンションが建設されるのだから誰もが仕事が欲しい。足元を見た施主は自分の利益を最大化して最も安く請け負う会社を選ぶ。

 

さらにその会社は自分で施工せずいくらか抜いて子会社に回す。このあたりで建築原価が合わないことが予測される。子会社が計算していくらか抜いて現場工事を発注する。このあたりでは赤字か手抜きにしかならない工事と化してる。

 

孫請けはどこも仕事が欲しいから何とか食らいついて受注する。それからだ、さあどうやって利益を捻出するか。基本的には材料を安いものにするか材料そのものを減らすかである。

 

そして納期を守るのも日本の特徴だ。これは厳しい足かせである。手抜きになった杭は納期の最後の方に集中していたと言われている。

 

それにしても今回の横浜マンション事件は去年には判明してたわけで今まで各担当者で一生懸命ダメージコントロールを考えていたのだろう。

 

表面化するまでに誰がどれだけ責任とるか、現場と下請けに責任を散らしていつの間にか誰が悪かったのか分からなくする。最大限の誠意を見せて立替まで含めて提案しろ。そして半年くらい時間をかけてお詫びして世間が忘れた頃にささっと片付けろ。

 

上記の文章は主語がない(笑)。いかにも日本的な表現方法とも言える。今までもこれで通って来たんだ、今回もこれでいくぞ、何だか業界側の団結の強さを感じる(苦笑)。

 

それに対して住民はそれぞれに事情が違うから要求がバラバラ、こちらマンション管理組合と言っても素人の集まりであるから答は出ないだろう。

 

こういうのは集団訴訟を得意とする弁護士集団がマンション全戸を回って委任状を取りマンション管理組合での支配権を持ちつつ同時に三井不動産とプロ同士の話し合いを望むのが現実的な落とし所だろう。

 

誰が悪いのか?勿論一義責任は工事責任者にあるのだろうが日本の社会構造や業界構造が起こした「ごく普通の事件」である。

 

本来なら正しい費用を支払って仕事をしてもらうべき施主、建設費用に利益をしっかり盛り込み見積もり工期にも余裕を持ち仕事を請け負う元請け、下請けは元請けの条件を良く理解した上で専門技術を持つ孫請けに発注するが孫受けが手抜きすることのないように予算も納期も十分に現実的な計画にする。

 

そういう皆が利益が出る構造であるべきなのに何故か自由経済の名目で皆がダンピングして結局誰も儲からない状態にしている。

 

例えばニュージーランドでは建設が盛んだが赤字で作ることはあり得ない。赤字の仕事は最初から誰も請け負わないからだ。そして納期も人間のやることだからと余裕を持っている。業界全体で皆が儲かる仕組みが出来上がっている。

 

また建設ビジネスが下火になれば次に伸びるビジネスに皆がシフトする、ごく普通に。またはこれを機会に仕事を辞めて大学に入り直して違う資格を取るという方法もある。大学に通っている間の学費は奨学金を申請出来る。それからこちらは返済不要で政府から毎週貰える学生手当なんてのもある。なので仕事にしがみつく必要がないのだ。

 

では何故日本の建設業界がダンピングするか?それは建設会社が業態転換して建設業界から出て行くとか社員が違う業界に移動するという選択肢がないからだ。結局人材の流動化がないままに目先にぶら下がる仕事に飛びつくしかなくなり赤字発進となる。

 

その結果として建設業界は「上」だけは何とか生き残るが現場で手に技術を持っている職人が老齢化などで辞めていく、自分の技を伝承する相手も見つからないまま。その結果として経験のない若い職人が職人技を引き継ぐことなく普通に仕事をすると普通に事故が起こる。

 

建設業界では以前ではあり得なかったようなミスが次々と発覚している。都内で人気物件でで既に販売終了、入居寸前の超高級マンションが突然契約解除。「簡単な手直しではどうしようもないミス」が発覚して販売側から取り下げてきた。

 

姉歯事件に異常に反応した政府と業界であるが、今回の件が特別ではないことは明らかである。これからは技術神話などあまり思わない方が良い。これからも手抜きの実態が次第に明らかになるだろう。信頼を失った日本。これが21世紀日本の新常態になるのだろうか。中国の事を笑ってる場合ではないぞ。



tom_eastwind at 14:25│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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