2017年08月24日

下りエスカレーター

普通に考えればビルの上の階に行くときは上りエスカレーターに乗る。下りエスカレーターに乗っても上には行けない。

 

それは下りエスカレーターでも勢い良く駆け上がれば上まで行けるって話もあるかもしれないけど、普通に考えれば上りエスカレーターに乗る方が楽だ。そうすれば自分が駆け上がらなくても自動的に上の階に行けるからだ。

 

これを国に置き換えればエスカレーターが下ってる国で上に行こうとする努力よりも上ってる国で普通に生活していれば普通に上に行けるという事になる。

 

勿論これは国の位置づけとか規模という観点も必要である。どんなに成長国って言われても今政治情勢が不安定なミャンマーや賄賂政治のカンボジアで何かしようと言う気持ちにはならない。なのでそう考えると政治的治安は重要である。

 

それから言語である。アフリカの発展新興国でいくら自分の子供がスワヒリ語覚えても21世紀社会で国際標準語とは言い難い。

 

であればやはり英語圏である。そうなるとまずはフィリピンか。ここは大統領がドトルテになり治安は良くなっている。けど基本治安が悪いもんな。バブル崩壊後にどれだけの日本人がここに連れてこられて殺されたことか。今は良くても近い将来大統領が変われば元の木阿弥になる可能性は高い。

 

そうなるとカナダ、米国あたりが良いと言える。英語は通じるし学校もレベル高いし。ただ移民一世として現地で生き残るのは相当の苦労が必要である。

 

香港人のように英国植民地の時代に西洋文化を学び英語を学びそれでも他の民族に支配されている感覚を理解しているから、バンクーバーやトロントに行くのは何の抵抗もない。嫌なのはトロントの寒さくらいである。

 

それでも彼等香港人は共産党中国の支配下を嫌がりバンクーバーで日本食レストランを開き永住権を取得して自分たちの街をあっという間に作った。その時日本人ワーホリや若い日本人労働者は香港人の支配下で日本食レストランスタッフとして働くことになった。

 

それでもカナダは成長する国だった。普通に一生懸命頑張って永住権取ってれば21世紀の成長景気に乗って家を買って給料取って子供たちを学校に送り自分はあまり考えずに一生懸命働けばいつか自宅のローンを返すことが出来た。

 

米国も大都市で生活する能力があれば何とか仕事を見つけグリーンカードを取得して家を買って一生懸命働いてローンを払うことが出来た。

 

ロンドン。ここはどうだろうな、表面的には上品であるが実際には人種差別がきついし英国人ビジネスマンはとにかく笑わない。知らない人にはまるでそこに存在しないような態度である。

 

但し第二次大戦後に米国に主権を渡したとは言えアフリカの支配権を押さえてたりシティが1980年代に金融で復活した時に強力な力を持ったのは事実である。なのでこの国も上昇傾向にあると言える。

 

今回のEU離脱がどう出るにせよ英国はやはり強い。なのでここも買いだろう。ただしそれはこの国の根っこに少しでも触れる事ができるのが前提である。この国は目に見えない階級の壁が高いのだから。

 

こんな風に北半球の国を想定してみるが、もう少し深く掘って行くとこれまた違う図柄が観えてくる。

 

それは日本に居住しつつ国家自体が沈み始めてもある特定の人々は沈まない、むしろ沈む国家を利用して更に成長する少数の人々である。

 

どこの国でも文明でも一番お金が動くのが興隆する時と衰退する時という話がある。つまり衰退する国では富が急激に移動するが多くの人が富を失う中でもその富の流れる先が一部の人々である場合、その人達は国が衰退する時に急激に成長するという事実だ。

 

例えば日本は1980年代までは一億総中流と言われて皆がそれなりに豊かだった。ところがバブル崩壊後に社員制度が崩壊した結果社員総賃金は減少し支配層の給料や配当は増えた。

 

賃金が下がる中で物価も下がるが自分の資産は下がらないので結果的に可処分所得が増えることになる。

 

だから国は下りエスカレーターになってても本人は国のエレベーターの隣にある上りエスカレーターに乗っていたのだ。

 

だから目端の利く人であれば自分の住む国が衰退してても上手く上りエスカレーターに乗り換えることが出来る。

 

ではそのような人はどういう人だろうか?まず第一に自分の頭でものを考えることが出来る人だろう。殆どの日本人は小学校になる前から個性とやる気をすり潰されて社会に出た時の機械の歯車になれるよう、先生の言うことに何の疑問を持たずに黙って実行する。

 

こういう人たちは他人と同じことをしていれば社会が安定している時はきちんと生活が出来る。けれど自分の頭で考える習慣がないから、いざ社会が不安定になるとどうしていいか分からない。何故なら今まで勉強して来た教科書にはそういう技は書いておらずかと言って自分で考えろと言われてもそんなもんとっくの昔になくしている。

 

だから衰退する社会ではその社会の中心にいる人は周りの人々と共に衰退していくしかない。それが自分の選んだ道なのだから。

 

これから日本が衰退していくのは確実である。国内消費は減少し今の日本経済を支える内需が段々弱くなる。企業は外国に打ち出る勇気もなく売上の減少が株価の減少に直結する。

 

人口減少に高齢化で消費が弱まるだけではない。本来は老齢世代から若者世代への資産移転が行われるはずが、年金の減少、医療保険の個人支払い増額、資産税、相続税で政府が日本人の個人資産を自分の懐に入れることになる。

 

本来なら個人資産を利用して個人が日本で新しいビジネスを起こして日本を活性化させて企業が生んだ利益で雇用と納税を生むべきである。

 

しかしそのような事を考えようとしない人々は今あるところからカネを取る。まさに金の卵を生む鶏を殺すようなものだが、それが正しいと信じて疑わない人々もやはり子供の頃から個性をすり潰されて政府の考えを植え付けられた人々なのであるから仕方ない。

 

つまり日本という国は元元そのDNAに一定期間ごとの滅びの能力を持っているのだ。

しかし1億人の人口というのは世界の小国からすれば大きな規模であり自分の頭で生き残る才覚がある人にとっては日本はまだ「上りエスカレーター」なのだ。

 

海外移住だけが生き残る道ではない、才覚さえあれば。



tom_eastwind at 21:25│Comments(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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