2017年12月13日

コモンローと大陸法

今日は朝一番から弁護士と打ち合わせ。M&A案件等の法的助言で日本の法律とニュージーランドの法律の違いがあるので、その細部のすり合わせ。

 

日本で使われている法律は大陸法と呼ばれて主に欧州大陸で使われている。事細かに書かれてて条文が明確でそれをクリアーすれば問題ない。

 

けれどニュージーランドはコモンローと呼ばれる英米法で先例や慣例を重視する。なので明文化された条項が大陸法に比較して少なく、それが良い面でも悪い面でもある。

 

中国人が初めてニュージーランドに来るとそのルールのゆるさにびっくりすると共に穴ぬけ探しをするのだけど、この国って穴を空けているわけではなく後出しジャンケンで穴抜けした人を叩く仕組みがあるのだ。

 

これは法律を表面的に読んだだけでは理解し難く、どこに穴抜けした人を叩く仕組みがあるか視えない。特に大陸法で育った日本人にとってもそれは同様である。

 

だから日本とNZ両国をまたいだ作業をする時は両国の法律、税法、文化習慣の違いを理解しておかないと木に竹を接ぐ作業になってしまい失敗する。

 

弁護士事務所も年末の忙しさであろう、日頃見慣れたのんびりした弁護士たちが今日は本当にドアから出たり入ったりばたついてるのがよく分かる。

 

弁護士と言うのもピンきりで、キーウィは個人的にはお人好しで懐っこくて良い人々なのだが仕事となるとガラリと変わる面がある。それは「俺かお前か、死ぬのは奴らだ」的な態度である。

 

契約観念は英国の末裔であるからきちっとしている。但し多くの弁護士にとって目の前にいる新しい顧客が一回こっきりなのか継続して利用してくれるのかで全然態度が違う。

 

つまり一回こっきりの顧客は単なる食い物、出来るだけたくさん顧客のために手紙を書くけど最初から「この案件、無理だなー」と腹の中では思っている。

 

僕も仕事柄色んな案件で色んな弁護士から問い合わせが来るけど、中には「こりゃねーな」と言うような文章もある。最初からやる気ねーな、けどこれ一枚書いて送れば400ドル入るからいいや的な文章である。

 

中には最初からNZの法律チェックもせずに書いてくる弁護士もいて「あーあ」である。何せ文中に「あなたが旅行業と言うビジネスを行っているのならTAANZと言う資格を取っている筈なのに取って無いではないか!」と訴えるが、あのですね、それは資格不要なのです。TAANZが必要なのは航空券を発行する会社のみです。そういう基本的な事実を調べもせずに手紙を送りつけるのだから「あ〜あ」である。

 

NZではNZの法律がある。弁護士、会計士、不動産、医者、看護婦、など免許の必要な業種がある。しかし料理、インバウンド旅行、庭掃除、クルマ洗いなど免許の不要な業種もたくさんある。そういう現場の仕事を知らないままにラグビー脳みそで突っかかってくるのだろう。

 

他にも日本とNZの法律の感覚的な違いで言えば、日本の法律とは正義や真実を追求するものだと考えている人が多いが現実は違う。法律はあくまでも法に基づいた判断をするのみであり正義や真実は追求しない。

 

そしてNZになれば更に徹底している。何せ僕がこの国の法律を勉強するために初心者用に買った本の一番最初のページに書かれていたGolden Rule(黄金律)が「法は真実を追求するものではなく、人々を仲裁するものだ」と明確に書かれているのである。

 

つまり何が真実であるかは法律には関係ない。敵対する当事者の間に立ち仲裁するのが法廷の仕事なのだ。そしてその仕事を手伝うのが双方の弁護士。

 

双方の弁護士がお互いに言い分を並べてメールや手紙でやりとりをしてすべての記録を残す。そしてお互いの言い分が出尽くしたところで和解するか、それとも裁判にするかという判断になる。

 

しかしそれでもNZの裁判所が行うのは過去の慣例に従った仲裁であり正義の追求はしない。

 

もちろん日本にもNZにも名誉毀損、業務妨害等の法律がある。名誉毀損とは事実かどうかは関係なく他人の情報を第三者に公然と事実を提供した事をもって名誉毀損罪が成立する。業務妨害も同様に犯罪である。

 

インターネットが流行る時代であるからいろんな書き込みがあるが、観てると何時訴えられても仕方がないような書き込みで「おいおい、大丈夫か?」と観ているこっちが心配するような容もある。

 

日本人は事実であれば公表すれば良いと思ってる人が多いけど実際は事実であっても公表すれば罪に問われるのだ。

 

名誉毀損、業務妨害、どちらも3年以下の懲役である。

 

NZでビジネスをするのはアジアの国に比べてやりやすい。法制度が出来上がっておりその仕組みさえ理解していれば背中を撃たれる事はない。

 

アジア、例えばカンボジアとかベトナムだと賄賂が前提。笑い話だがフィリピンの話でこんなのがある。

交通違反で逮捕された運転手が刑務所に入れられた。同じ房の奴に聴かれた。

「おい、何でお前刑務所に入ったんだ?」

「カネがなかったからさ」

 

こう考えるとニュージーランドは良い国、平和な国といえる。しかし法律の適用は日本とはやり方が異なる。この国で住む限り文化習慣に加えて法律の違いはしっかり理解しておいた方がよい。



tom_eastwind at 20:57│Comments(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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