2017年12月23日

来年の計画

これは僕の計画という意味ではなく、もし皆さんが来年ニュージーランドと直接関わりを持つことがあれば知っておいた方が良い基礎知識一覧と言う意味である。

 

この国で長いこと住んでいると感じるのは、この国の基礎活動を決定しているのはどうも時の政府ではなくもっと後ろにいて50年とか長期で自国社会を観ている人々ではないかという印象である。

 

英国にも米国にも長期外交を考える組織があり時の政権はあくまでも「今起こっている事件」に対応するが、自国の50年後を考えるときは短期政権には難しい。

 

この国に長く住んで毎日現場で仕事をして来た人間からの視点で見ると、これは知ってる人は知ってるごく常識的な事だけど日本にいるとなかなか理解しづらいと思うからだ。

 

まずNZは地政学的に観て南太平洋の鉱物資源のない周囲をタスマン海と南太平洋に囲まれた小島であり仮想敵国もいない治安の安定した国家である。

 

19世紀の植民地化から始り1960年代までは英国の食料基地として鉄道と冷凍線を使いせっせと英国に食料を送っていた。

 

ところがその後英国のEC加盟等によりNZ経済は急激に悪化することになり新経済を模索した。その後社会主義体制の崩壊と共に市場原理主義が取られて多くの公営企業が民営化して農業も解放された。

 

そして国民は自分の身の丈を知り次にすべき事を考えた。

 

1・人口増加。

隣国豪州と4倍の人口差と二国間自由貿易協定により第二次産業がNZ国内では通用せず豪州からの輸入を中心としている。この状況を改善するため移民と自然増で適正に人口を増やす。

 

2・安心かつ安全な農業・酪農の推進と輸出。

NZは人口が少ないので国内消費が少ない。平均食料生産率で観れば約300%である。ならば世界に売れる競争力のあるものは質の高い農業製品と酪農製品であるのだから輸出しようと積極策を取り入れている。

 

3・豊かな自然を維持しつつ観光産業を取り入れる。

世界的に観ても豊かな自然と受け入れる人々のフレンドリーさは観光産業に合っている。青空を見上げれば本当に平和と自然を感じる。こりゃ伸ばすべきだ。

 

4・治安の良さを利用した海外留学生と教育産業の強化

既存の仕組みをそのまま利用して外貨を稼ぎ大学昨日を強化して世界に飛び立てるキーウィの若者を生み出す。彼らはいずれ世界からNZに戻って来て国家の役に立つ。

 

5・NZ起業家を生み出す。

 

上記の基礎戦略を実行するために政府は様々な政策を実行する。ただ最終目的はあくまでもNZに住む多くの人々を幸せにすることであり外国人を喜ばせる為だけではない。そこで出てきたのが、

 

1・習近平の狐狩りの受け入れ。

2年前までは永住権を取得した移民への調査は実質的に殆ど行われなかった。しかし現在は永住権どころかNZ市民権を取得した人々にも取得時の違法性がなかったか調査が入ったりする。中国人が火付け役であるが現在は移民局内部で多人種に広がっている。

 

2・投資家ビザへのシフト。

以前は北半球に知られた国でなかったので一般技能移民で人口増加を政策としたが21世紀に入り知名度が高まったので今後は世界で戦える優秀な特殊技能移民か投資家を移民させる方法に切り替わった。これは最低3年は続くだろう。

 

3・農業、酪農製品の世界向け輸出

過去は国営公社だった企業をフォンテラ、ゼスプリ等民間企業にして世界中にNZブランドを売る。日本向けにはキーウィフルーツだけでなくNZ産の牛肉、赤肉の旨味を知ってもらうために東京にパイロットレストランを設置した。他にも中國向け高級食料品の販売にも成功している。

 

4・観光産業の強化。

今後観光産業などから資金を調達して全国の観光地の整備や道路開発などを行い、自然を守りつつ観光産業を成長させていく。その課程では今後は観光者数のみを追うのではなく質の高いリピーターを増加させることも検討する。

 

5・教育産業。

留学産業には法整備などで力を入れてきたけど街を歩くアジアの若者の横柄さや最終的に永住権狙いでありながら労働価値は高くなく、そのような人間を受け入れるべきか。これは十数年前にも全く同じ議論がありその結果留学生が減少した。

 

留学生にしても「大体この国で勉強しても世界で通用するか?それなら米国に留学した方が将来的に有利である。」と考える若者はいる。つまり優秀な留学生が集まらないのにこのままやってていいのか?と言う疑問である。

 

国家としては現在のニュージーランドは非常に勢いがある。今年度からは10年前までと同様にプライマリーバランスが黒字化する。これは今後も続く。2007年から去年まで赤字財政だったのはリーマンショックとクライストチャーチ大地震の影響であった。

 

では今後NZはどちらの方向に進むだろうか。まず明確なのは軍備強化に進むことはない。

 

次にNZがいくら領土を広げようとしても周囲は海である。だから限られた国内資産である観光と農業を強化して利益をエつつ小さな国でも出来る起業家育成を行う。最近ではスタートアップと呼ばれているがNZ政府が力を入れている部分だ。

 

ITを使ったスタートアップであれば広い土地も不要である。大事なのは若者が自由に考える環境であるが、その環境はNZには十分になるほどある。

 

だからもしNZで貴方がこれから何かやるなら上記の基本的方針に乗っかった流れで行動すべきだろう。

 

例えばNZの永住権を欲しい若者がいればまず革新的ITビジネスモデルを構築して資金をクラウドファンディングで集めてNZで起業家ビザを申請してNZから世界に発信するビジネスを成功させる。

 

農業も良い。この国の風土に合った輸出用食料を作って日本に輸出する。農業はやる気があれば誰でも参加出来るビジネスだし輸出は国策である。

 

そして観光。これからはNZインバウンドで新しい商品を開発していけば良い。例えば今テカポで星を見るツアーが人気であるが、昔は地元の人はそんなものが商品になると思ってもいなかった。他にもこの国には観光要素が十分に詰まってる。これから世界に発信していけばいい、何せバンジージャンプ発祥の国でもあるのだから。

 

いつも思うことだが人生は大河の上流で生まれて筏に乗り込み大海に向かって一方方向にしか進まないものだ。絶対に遡れないし途中で他の河に乗り換えることも出来ない。

 

出来ることは河の右に寄ってみたり左に寄ってみたりすることでも、川の流れは決して逆転しない。

 

そんな時に大事なのは自分の流れている方法を理解して出来るだけ流れに上手く乗ることである。その為には今自分がいる場所の環境を理解してその環境の中でどうやれば流れに逆らわずに最大効果で動けるかを考えることだ。

 

来年の計画を作る時、この街や国はどうなっていくんだろう、それを真剣に考えることがまず第一である。

 

来年の計画。多くの人がこれから考えるんだろうな。



tom_eastwind at 11:17│Comments(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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