2018年07月23日

ザ・バット

シドニーを舞台にして描かれるジョー・ネスボの出世作。シドニーで発生したフィンランド人女性の殺人調査を協力するためにハリー・ホーレ刑事が送り込まれるところから事件は始まるが、通常僕らの知るシドニーとは全く世界を見せてくれた。

 

それはキングス・クロスの実態であり麻薬の蔓延であり法治国家と呼べるのかと言うまでのアボリジニ先住民に対する差別であった。

 

勿論ニュージーランドでも先住民であるマオリ族がいるが彼らの権利はそれなりに守られており公用語も英語とマオリ語である。

 

結果的にマオリ語を話せない若者が増えているとか刑務所の囚人のうち半分はマオリだとか繁華街でたかりをやったり大声で他人を脅すのがマオリだとしても現実に現在の首相代行はウィンストン・ピーターズというマオリであり国民党の現在の代表もマオリであるから、やはり問題は本人の素質とやる気であろう。

 

ところがジョー・ネスポが過ごしたシドニーではアボリジニ対する政策が厳しく「ロスト・チルドレン」と呼ばれる、アボリジニの子供を生まれた時点で生みの親から強制的に引き離し里親に渡すと言う制度があった。

 

アボリジニが白人のいるバーやレストランに行くときはスーツを着て行くんだ、でないと叩き出されるからね。

 

話は一人の女性の殺害に終わらず連続殺人事件となった。ここでハリーはオーストラリアの警察の仕事に惑わされながらも何とか自分なりの類推をする。そしてこれが読者にとって一気に困惑の中に叩き込まれてしまう。

 

数ページ前に読んだ短い文章、もしかして意味を取り違えていないか?少なくとも相当の読解力を要求されるのだが、それでも読了した時点での心地よい疲れは米国の軽い小説には存在しない。読書が好きで時間のある方には是非とも読んで頂きたいものである。



tom_eastwind at 19:10│Comments(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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