2018年07月30日
ひとかけらのパン
出所は覚えてないが今でも記憶の中に残っている一つの作品がある。筋書きも細かい点は間違っているかもしれないが大筋では合っている。
戦争中の欧州である子供が家族とはぐれて食べるものもなくどっちに向かえば避難出来るか分からない。
そんな時、隣に座っていたお爺さんが、
「避難場所はあっちの学校だ。あそこまで行けば家族も見つかるだろうし大丈夫だ。」
「けどお腹が空いてるんだろう、ここに古くて乾燥しているがひとかけらのパンがある。これを持っていきなさい。」と言って紙包に入ったパンを渡してくれた。
「ただしこのパンは君の生き残るための希望だ。腹が空いたからと言って食べてしまえば君は希望を失う。だから避難所を見つけるまでは絶対に食べるな。」
きつく言われた子供はお爺さんにお礼を言いつつジャケットの内側にパンを入れて避難所に向かった。
途中、火事で全焼する住宅や行く宛もなくふらついてる人々を観たが、子供はパンをじっと抱きかかえて何とか街を横切り避難所を見つけた。
避難所で温かいスープと柔らかいパンをもらった。そこには他にも多くの子供がいたが、皆一様に苦しそうな顔をしていた。
「僕は良かったな、あのお爺さんに助けてもらって希望までもらって」
そう言ってジャケットの内側から出したものは、ひとかけらの木材だった。
tom_eastwind at 15:06│Comments(0)│
│諸行無常のビジネス日誌